プリズム
□プリズム 〜第壱章 迷子の騎士と青年〜
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「…ここは何処だ」
完全に迷っていた。
タルタンの街の歴史は古い。国境間近にあることから、過去何度となく戦争によって破壊され、そしてその度に復興してきた。
そのため一歩裏路地に入り込むと、新しい建物と古い建物が入り混じり、まるで迷路のように複雑に入り組んでいた。この街の住人であっても、一度迷ってしまったら簡単には抜け出せない。ましてや此処に初めて来た人間であればなおさらであった。
「…そもそも俺どっちから来たっけ?」
来た道まで分からなくなってしまっていた。ともあれ、此処でじっとしていても埒は明かない。こうなってしまっては進むしかないだろう。
「くそっ。なんで俺がこんな目に……!」
青年は歩きながら、こんな所で迷子になる羽目に陥った元凶を思い出していた。
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