プリズム
□プリズム 〜第弐章 図書館と青年〜
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「…なあ、ここって……」
日が暮れるまでに荷物を運んでしまわないと危ないという事で、アスマが荷車を引き、カインが道を指示しつつ後ろから押す、という形で運ぶ事になったのだが…。
ごちゃごちゃした細い路地を抜け、それなりに広く安定した一本道に出て暫くした後、不意に荷車が重くなった気がした。
アスマは緩やかな傾斜に差し掛かった所為かとも思ったが、それにしたってやけに重い。体力・筋力には自信があったのだが如何したのだろうと思い、振り返ると―――…
「…あんたさ、なにやってんの?」
「……なにって…」
なんと、後ろから押してくれているとばかり思っていた彼は、ちゃっかり荷車の後ろに座っていた。道理で重いわけだ。
見ての通りだけど、と全く悪びれた様子の無い彼に、呆れて怒る気にもなれない。
「あー…せめて降りて歩いてもらえると――」
「やだ」
こんな時だけ即答なのかっ? さっきまでやたら溜めが長かったのに…!
アスマのそんな心の声が聞こえたのかどうなのか、カインは目を伏せ、悲しげに眉を顰めた。長い睫が微かに震える。
「………疲れた…」
「うっ…(汗)」
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