プリズム
□プリズム 〜第弐章 図書館と青年〜
2ページ/10ページ
確かにその仕草はわざとらしかった。というか、これまでが無表情なだけに、明らかにわざとだった、が…
(やめろやめろその顔はぁぁぁ!! 俺がいじめてるみたいじゃないかっっ)
カインの顔は俗に言う女顔で、その所為かアスマは女の子をいじめている様な妙な罪悪感に襲われていた。
過度に責任感が強く、過度にお人よしな性格も、この場合災いした。
その結果。
アスマは目的地であるカインの住まいに続くゆるゆるとした坂道を、何が入っているかは分からないがやたらと重い3つの木箱と、人一人を乗せた荷車を引いて上って行くことになった。
疲れている、というのは本当なのか、カインは荷車の上に、器用に木箱をよけて丸く横になったまま、ぴくりとも動かない。
その緩やかだが長い坂道を上る、上る、上る………まだ上る。
そして、ようやく辿り着いたその建物は――――…
「…なあ、ここって……」
急な斜面を迂回するように緩やかにカーブする坂を上がって行くと、それまでは影になっていて見えなかった建物が姿を現した。
石造りのどっしりとした、けれど何所か品のある外観。然程大きくは無く、ごてごてとした装飾はないが、アスマにも見覚えのあるものだった。
「ここって、図書館、だよな…?」
.