プリズム

□プリズム 〜第弐章 図書館と青年〜
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 ゼイゼイとまだ息が整っていないアスマに、相も変わらず茫洋とした声が告げる。

「……うん。そう」


 何時起きたのか、カインは荷車の上で猫の様に伸びをして答えた。軽い身のこなしで降りて、よく寝た、と呟く。


 …やはり寝ていたらしい。


「…正確には図書館兼交易資料館。資料は多分一番古いので四百年前のからあると思う。
………荷物、運び込むから手伝って」

 図書館の扉を開け、楔で扉を開いたままの形に固定してカインは言った。ひょい、と木箱を一つ抱えて、さっさと中に入っていく。

「あ、ああ」

 慌ててアスマも木箱に手を掛けた、が……

「―――! おもっ」

 ずっしりと重い。持てないことは無いが箱の角に食い込んだ指が痛い。いや、重たいことは荷車を引いている時から分かってはいたのだが、それよりも気になるのは―――

(おいおいおい。さっきあいつコレ軽々と持っていたよな!? おかしいだろ俺これでも軍人なのに…。一般人に、それもあんな女みたいな奴に力で負けるなんて……くっ…指が痛い…さっさと運ばないと指がヤバイ。 一体何が入って……ん? もしかして…いや、もしかしなくても…)




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