ギアス文

□その想いの名は
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 どれくらい、そうしていただろうか。
 斑鳩の艦内が、僅かに騒がしいのに気付いた。

(まさか、こんな時に敵襲……!?)

 唯でさえ兄さんが本調子でない今、襲撃を受けたら黒の騎士団はひとたまりもない。そんな事になったら兄さんは…

 慌ててゼロの…兄の私室へと向かいかけた足を止めた。
 通路の先から団員が数名、口々に何か言いながら此方に向かって来る気配に、咄嗟に横に伸びる通路に身を隠す。…気付かれては拙いと、何故だか直感的に思った。

 気配が近づくにつれ、だんだんと声がはっきりと聞えはじめた。聞き覚えのある声に、おそらくは幹部候補クラスの団員だろうと当たりをつける。何処か物騒な雰囲気に、何事かと耳を澄まし―――次の瞬間自分の耳を疑った。


「ゼロは俺たちを裏切っていたんだ!!」

「特区日本の時の日本人虐殺も、裏でゼロが手を引いていたって――」

「騙していたんだ! 俺たちを――」


 ゼロを批判する団員達の言葉に、心がすっと冷えてゆくのが分かった。


 何を言っているのだろう、こいつらは。

 彼らが何をどれくらい知ったのかは知らない。けれど散々ゼロに…兄さんに頼って、利用して、全ての責任を押し付けて、そのくせ最後には裏切ったと言って弾き出すのか。こいつらは兄さんに、感謝したってしきれない程の恩があるはずなのに…!! 兄さんがいなければ何も出来ずにブリタニアに喰いものにされるしかなかった奴らが偉そうに……!!


「で、場所は何所だ?」

「第四倉庫だ。今カレンさんがゼロを呼びに行っている」

「急ぐぞ。早く行かないと……」


 そこで先頭に立っていた男の言葉が途切れた。横の通路から現れたロロの姿を見てぎょっとしたように立ち止まる。

「……何の話?」

 はっ、と我に返った男が知らないのか?と説明をはじめる。

「時間が無いので詳しいことは話せないが…ゼロは我々を裏切っていたんだ。これから我々は第四倉庫でゼロを討つ」

 ロロの目がくっ、と見開かれた。
 彼らの会話が聞こえた時点である程度予測はしていた。だが、だからといって怒りを抑えられる訳ではない。



「おい、どうし…」

 ロロの様子を不信に思ったらしい団員に声をかけられる、が…
 ギアスによって時を止められた団員達は、なすすべも無く血の海に沈んだ。
 その惨状を顧みる事もなく、ロロは走り出した。



 お願い…間にあって………



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