ギアス文
□その想いの名は
3ページ/5ページ
ルルーシュが銃撃にあう寸前で、なんとか蜃気楼を騎士団とルルーシュの間に割り込ませる。
「大丈夫!? 兄さん!!」
「――ロロ!?」
「兄さんは僕が守るから!」
ロロの右目が赤く輝く。
包囲を掻い潜り、斑鳩の艦外へと飛び出す。
「やめろロロ! もういいんだ!!」
「ロロ、もう俺には、生きる理由なんて…!」
蜃気楼の腕の中で、兄さんが叫んでいる。泣きそうな声で。でも…
「殺させない、絶対に」
たとえ兄さんが、それを望んでいたのだとしても。
「こんな広範囲でギアスを…やめるんだ。これ以上はお前の心臓が持たない」
コクピットハッチを開き、兄さんをコクピット内部に入れる。僕の横の僅かな段差に腰掛ながら、兄さんは尚も僕を止めようとした。
「もういいんだロロ。俺はもう…」
「だめだよ兄さん。だって…」
だって、僕には兄さんしかいないんだ。たとえ兄さんが僕の事を駒としか思っていなくても。
死なせたく無い。僕にとって一番大事な、唯一無二の存在。それにね…
『やめるんだロロ! 俺なんかのために…! 俺はお前のことを利用していたんだぞ!!』
切れ切れに聞こえる、兄さんの声。心配そうな、今にも泣き出してしまいそうな声。
どうしてそんな辛そうな顔をするの? 僕の事なんて大嫌いだったんじゃないの…?
………ああ…やっぱり兄さんは嘘つきだね…
「やめてくれ! ギアスを使うな!! 死にたいのか!?」
だめだよ。いくら兄さんの頼みでもそれだけは聞けない。嘘つきな兄さんの頼みなんて、もう聞いてあげない。
だって…
「僕は、道具じゃない……これは、僕の、意思なんだからぁ…!!」
「ロロ…どうして俺を助けた…? 俺はお前を…」
何とか追手を振り切り、森の中に隠れることに成功した。けれど…僕はもう、もたないみたいだ。胸が痛くて、息が苦しい。視界も黒ずんできた。
「兄さんは、嘘吐きだから…」
「え?」
「うそ…だよね? 僕を、殺そうとしたなんて……僕が、嫌い、なんて…」
「そうか、すっかり見抜かれてるな…流石は俺の弟だな」
「そう…だよ。…ぼくは…にいさんのことなら…なんでも、わかる……」
ああ、もう、本当に…声が、出ない。力が入らない。まだ、兄さんに、伝えなきゃいけない事があるのに…伝えたい事がある…のに……
その想いの名は
ごめんなさい。
『僕だけは兄さんと一緒にいる』って、約束したのに…守れなくて…
それから、ありがとう。
こんな僕を、愛してくれて。
たくさんの感情をくれて。
兄さん。
兄さん。
……大好きだよ。
NEXT→おまけ