ギアス文
□契約の証
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遠く響く蝉時雨。揺れる木漏れ日。夏の香り。
あの幼い夏の日に、交わした言葉。
『ルルーシュ!』
『ああ…スザク』
『『俺(僕)とお前(君)、二人でやれば出来ない事なんてない』』
そう言って、笑いあった。あの頃は確かに、友情から生まれた言葉だった。
俺たちは、友達、だったから。
けれど、違う。今はもう。
Cの世界で、スザクは俺に剣を突き付けて言った。ユフィの仇だと。だが…
『君が、ユフィやナナリーの望んだ、優しい世界を造ると言うのなら…協力しよう。もう一度、君と手を組もう。……ルルーシュ』
スザクはルルーシュから剣を引き、手を差し出した。ルルーシュは一瞬驚きに目を見開き、そして表情を引き締めた。
『そうだなスザク。…俺とお前』
ルルーシュはゆっくりと差し出されたスザクの手に、自身の手を差し伸べる。指先が、触れた。
『『二人でやれば出来ない事なんてない』』
繋がれた手。けれどこれは既に友情の証ではなく。
これは、契約。
悲劇を、繰り返さない為の。
その為には何だってしよう。持てる力の全てでもって。手段は選ばない。後悔だってしない。
…もう、後戻りなど出来ないのだから。
「「「「「オール・ハイル・ルルーシュ! オール・ハイル・ルルーシュ!」」」」」
謁見の間に歓声が響き渡る。たった一人の名前を讃えて。
壇上に立つ二人の少年の姿を袖から眺め、緑の髪の魔女は微かに顔を歪めた。
なあ、ルルーシュ。
確かにお前は、皇帝の座を手に入れた。私が与えた力、ギアスによって。
けれどお前は、本当にそれで後悔はしないのか?
私は言ったな、王の力はお前を孤独にすると。
何人も見てきたんだ、私は。お前のように力を使い、そして、呪いの言葉と共に死んでいった王達を。
お前の選んだ道の先に、はたしてお前自身の幸福はあるのか?
お前を愛した者たちは、もうこの世にはいないというのに
本当にお前は、失ってばかりの子供だな。
いや、それこそ
…私に言えた義理ではないのだろうな。
END