コナン短編

□お試し期間
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「先ずはお試し下さい0120-△△△-×××」



そのCMの音と共に俺は唇を奪われた。





某月某日、工藤新一が服部平次と共に犯人を追って揉み合いになり、すっ転んで右腕骨折をした。

「堪忍」

弱々しく謝罪の言葉を投げかける平次に

「‥何でお前が謝るんだよ」
と新一が問う。

「…傍におったのに‥」

「バーロ。そんだけの理由でかよ!?いい加減腫れ物扱いすんの止めろ!!」

「ガチャ、バタ〜ン!!!」


何でだろう
アイツに心配されると何故だかイライラする

コナンの頃は素直に受け入れられた事が
工藤新一になると御礼すら言えない…

護ってやりたいと思っていたのは俺だったのに、実際 護られているのはいつも俺の方

俺が女だったら
『 心配してくれて嬉しい』
と顔を赤らめながら言えたのだろうか?





コナンから工藤新一に戻った3年前、
突然のキスと共に告白してきたのは平次。
新一は驚いて平手打ちを見舞った。

瞬間的に手が出た‥平次はぶたれた頬を押さえながら
「本気やから」
と言った。
一緒に探偵事務所を設立する約束を白紙にする事も、同居する事にも拒絶出来ずに今日に至る。


「ピンポーン」


自室で耳をすまし、しばらく待つが階下の平次が出る気配が無い。

「…ピンポーン」

仕方無く階段を降りて玄関の扉を開ける。

「はい。」

「こんにちは〜、私たち先日学園祭でお世話になりましたW大の者です。」

女子大生3人が御礼の品を持って現れた。
既に依頼金も謝礼金も戴いているのにもかかわらず、だ。
彼女等は新一の右腕の痛々しい包帯を見てまず驚き、白々しい程のいたわりの言葉を掛け、紙袋を渡すとそのうちの1人が言った。

「あの……服部さんは??」

「今、留守にしてるんです。」

「そう、ですか…」

新一は
『ああ‥そういう事か』
と心の中で思った。

御礼は表向きでそれが真の目的だと‥


本当に、イライラする


「待ちますか?私も行き先を聞いていませんのでかなり待つ事になるかもしれませんし、お構いもできませんけど?」

怪我人としての嫌味も含めて営業スマイル。

すると一瞬迷ってから
「い、いえ‥ご迷惑なので帰ります。変わりにコレを渡して頂けますか?」
と小さな封筒を受け取った。


そうして彼女達が去り、新一はリビングでテレビを付けるでも本を読むでもなく
床にアグラをかいてソファーに背中を預けて溜め息をついた。



『別に初めての事じゃない。』

新一の方が端正な顔で優秀に見えるがどこか近寄り堅いらしく、
実際にモテるのは平次の方。


だから思う、

『何で俺なのか』

大学に在学中も幾人もの女性から告白され、俗にいう
『引く手あまた』
『選り取り見取り』
だった平次だがあの告白事件以来、
彼女を作る事も、
一時的肉体関係も一切持っていないのを新一は知っている。
そして忘れ掛けた頃、冗談まぎれに俺に愛の言葉を囁く…………


アイツに護られてる事が情けない。

格好わり−、俺。

「‥んで、俺なんだよ…」

ポソリと洩らした背後から

「工藤?何しとんねんそんな所で」
と平次の声。

一瞬ドキリとしたが、平静を装い
「コレ預かった。」
と先程の封筒を手渡す。

「何や?手紙?」

コンビニの袋をテーブルに置きながら受け取る。
「知らねー。さっきW大の女が置いてった…俺風呂入ってくっから」

そう言い残して新一はリビングを後にする。
  
  
 
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