*ケロロ軍曹

□自分勝手な私事情
1ページ/2ページ



太陽が昇ると同時にテントから出て背伸びをするギロロ

まだ半分ほどしか観えない太陽の光を浴び腕や足や背中の筋肉を伸ばしている


ぐぐっとのけ反る

すると先程まで紺色だった空と淡い水色になる空の境目が観えた


体を起こす為に深呼吸をする

まだ正月を迎えたばかりの外はやっぱり寒くて息は白く上へ舞ってはすぐ消えた



ピピピピ…ピピピピ…

朝5:00


クルルにオッサンと呼ばれても仕方がないほどの健康な朝を迎えたギロロ


(このままジャージに着替えジョギングにでも行ってこよう。きっと今より清々しい気持ちになるに違いない)


そう想いテントの中へ戻りまだ温もりが残っている毛布を片付ける


冬は寒いのが当たり前

それ故に温もりが恋しくなってしまう

例え自分の温もりが残った毛布であっても無いよりマシだと想うそんな季節


そんな小さな甘えを堪えて毛布を三つ折りにしテントの端へ寄せた



しかしどうしても体温だけでは厳しいためホットコーヒーを作ることにした


湯が沸く間にコーヒー豆を挽いておく

インスタントより香ばしさが格段とあるのでコーンポタージュより朝に最適だ

最初はやはり音がうるさいが段々に音が小さくなる

香りも次第にテント内に広がる


あと少しで出来上がる

眠たいと楽しみが混じった顔は何とも優しい表情だった

豆を挽き終わると同時に湯が沸き終わる

タイミングがいいもんだ、と心の中で呟きマグカップに粉と湯を入れる

待ちに待ったコーヒーの出来上がりだ

手に取りまず香りで楽しむ



すると外から足音が聞こえてきた

用心深く外を観るとクルルがふらふらとこっちへ向かってくる


(何か用があるのだろう)


テントから身をのりだした
クルルと目が合った瞬間ふらぁ〜と倒れそうになった


「!?ばっ…」


急いでクルルを抱きしめ倒れることを阻止できた

顔を観ると目の下には隈が出来ていた

多分今時分まで起きていたのだろう

クルルの発明で小隊は大いに助かっているがこうなるまでするほどクルルはお人よしではない

もし自分勝手な私事情が招いた事態であるならば自業自得である


クルルはもとより食物から栄養を摂取せずサプリメントなどという薬のような錠剤で一日を過ごしているようだ


あくまでケロロから聞いた話だがクルルのこんな姿を観ては本当だとしか想えなくなってしまう


クルルの体温が低い事に気付き急いでテントに入れて先程よりも温もりの逃げた毛布をかけてやる

やはり寝てなかったのだろう

さっきまで不似合いな根性で開けていた目はすっかり閉じて静寂の中で寝息が聞こえてくる



数分後ギロロは悩んでいる

ジョギングへ行ってもいいのか
ジョギングへ行かない方がいいのか


二つとも戸惑う理由がある

まず一つ目はもしこのままジョギングに行って帰ってきた時にギロロの武器や防具に何をするか分からない
何しろ悪戯好きなクルルだからだ

そして二つ目は警戒心持続の限界である
時間潰しならテント内でもいくらか出来る
カタログを観るなり武器を磨くなりしようとすればできる
しかしクルルが寝ていたとしても目の前にいると気になって仕方が無い
見た目と違って言葉を出さないだけでボディタッチはケロロ並に激しい
こっちまでウトウトしてたら何をされるか分からない
何しろ悪戯好きなクルルだからだ


眉間にシワを寄せ難しい顔をしているとクルルが寝返りをうった

さっきまでは後頭部しか観えてなかったが今では寝顔が観える


こんなに無防備に寝てる姿を初めて観た

閉じ切っていない口からは甘えん坊の印であるよだれが垂れていた(心理の本で観た)

さっきまであーだこーだと言っていた自分がバカらしく想えてジョギングには行かず自分も寝る事にした

あんなに警戒していたのが嘘のような思想の逆転である


もう一枚毛布を取り出しクルルと少し間を置き背中を向けて横になった

朝早く起きたせいかすぐに睡魔が訪れ二分も言わずに眠りについた











次に目覚めたのは10時だった

気付けば隣にいたはずのクルルはおらず羽織っていた毛布はギロロの毛布とクルルが使ったであろう毛布の2枚に増えていた


(何もされなかった…)


期待していたわけではないが何もされなければされないで逆に怖くなる


とりあえず外の空気を吸おうと想い眩しい太陽の光を浴びた

するといつもギロロが座るレンガにいなくなったはずのクルルがいた


いるだけならまだいいが朝作ったままだったコーヒーを飲んでいる

すっかり冷めたコーヒーを啜りながらギロロを上目で見遣る


(やはり分からん…)


ため息をつきながらマグカップを奪って残ったコーヒーを飲み干した

そのままギロロはテントの中に入っていってしまった

残念そうに下を向いてくぅ…、と鳴いていると湯気が漂うマグカップを渡された


クルルはマグカップとギロロを2往復くらい観た後に静かに受け取って猫舌なのかコーヒーを息で冷ましている

そんな光景がどうもイメージと合わないため少し笑えた自分がいた




今はもう昼近くになっている


だが今からでも遅くはないとジョギングに行くことにした






もちろんクルルもみちずれにして



〜END〜

後書き→
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ