*ケロロ軍曹

□傘の涙
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【傘の涙】




外の状況なんて分からねぇ

薄暗いラボん中で俺はいつも通りに隊長の作戦とやらに使う兵器を造っていた

だが流石俺様と自惚れたいくらいたやすく出来てしまった

隊長に報告がてら気分転換しようと日向家リビングに向かった


「おぅクルルぅ〜!アレ出来上がったでありますか〜?」


その途中でいつもより上機嫌な隊長に見つかり俺の肩を叩いてくる


「あぁ、隊長のお望み通りにな…ククッ」

「流石クルルゥ、これで夏美殿をメタメタのギッタンギッタンにぃ〜」

「んじゃ」

「〜するでありますよクルル、っていねぇ〜っ!!」


隊長のテンションに乗るほど体力のない俺は覚束ない足取りでリビングに向かう



−−−−−−−



「あ、クルル。どうしたの?」


リビングにはソファーに座り本を読んでる日向弟がいた

日向弟の問いかけに気付いてはいるが答える気力がないまま窓の外を観る


「?…外は雨だよ?」


そんなもん観りゃ分かる

まだ陽も落ちねぇ午後4時なのに電気を付けなきゃいけねぇくらいの暗さ
音を立ててガラスにぶつかってる雨粒

こりゃ今朝から降り続いてる勢いだ


「そういえば…伍長、大丈夫かな?」


日向弟の言葉に振り向いた


「今伍長出掛けてるんだ。だけどソーサーが壊れちゃったらしくって歩いていくって言ってたから…。大丈夫かな?」


日向弟はドシャ降りの外を観た


「ク〜クックッ…」

「あれ?クルル、どこか行くの?」

「先輩を迎えに行くんだよ。じゃあな」


そう言って手元にあるボタンを押せばクルルのいる床が丸い円を描いて下へと下がっていく



−−−−−−−



「手間のかかる恋人だぜぇ。まぁそんな所が好きなんだけどよ。」


先輩の帽子の中に付けといた探知器が役に立った…が、言い訳何て言おう…

取り敢えず隊長より忍者より早く迎えに行くことに集中した


「出掛けたっつっても散歩かランニングあたり……ってオイオイ先輩。結構遠くまで行ってんなぁ。」


運転すんの面倒臭ぇから自動操縦機能の空中輸送ドックで行くことにした



−−−−−−−



その頃ギロロはびしょ濡れになりながら歩いていた


「さ…流石にキツいな…」


アンチバリアを張り少ない人波を避けながらふらついていく


「そ…ろそろ…帰るか…」


クルルの言う通り散歩だった

ソーサーが壊れたというのは嘘で単に歩きたかっただけのようだ


「それに、しても…雨…とは予想…外だったな…」

『ザザー…ザザー…。こちらナルト1。こちらナルト1』

「…ぅ?こちら、スカル1。…どうかしたか?」

『先輩、迎えに来たぜぇ』

「ぇ…ど、何処だ?」


立ち止まり周りを観るがクルルの姿は観えない

しかも急に立ち止まったから通行人に蹴られバランスを崩し尻餅をついた


『俺なら上だぜぇ』


雨が降る空を観上げると観慣れた飛行物体があった



−−−−−−−



「すまんな…、クルル…」


先輩は毛布に包まりホットコーヒーを手に持ちブルブル震えながら俺に礼を言ってきた


「ついでだったからよ」

「何のついでだ?」


適当に言った出任せに飛び付かれた


「…く」

「く?」


「…空中散歩」

「そうか。お前もなのか」


先輩が綻んだ

その横顔にドキッとする


「…あ、あぁ」


そんな顔すんなよ

たまらなく可愛いじゃねぇかよ

その毛布の中に俺も入れてくれよ

叶うはずのない願いが頭ん中でグルグルと渦を巻いていた



−−−−−−−



日向家に着くと先輩は一言「眠い」と残してソファーに寝てしまった

赤い悪魔にしちゃあ可愛らしい寝顔だ


あぁ

観てたら触れたくなるし…

触れたら触れたで抑えきれねぇし…


俺は何にも出来ねぇんだな

自分の無力さをアンタのおかげで想い知らされたよ


「まったくよ…」


俺の気も知らねぇで…

ぐっすり寝ちまってら…


先輩が寝返りして毛布がズレる

俺は起こさないよう近付き毛布をかけ直してやった


「……///」


規則正しい寝息をたてる先輩を観てると

走ってもいないのに心臓が煩いくらい鳴っている


このままラボに持ち帰りてぇがそんな事をしたら先輩は俺を突き飛ばすんだろうな

それでも俺は強引に抱きしめて先輩を離さないんだろうな

だけどそれはただの妄想だ

先輩相手だと慎重になりすぎて何にも出来なくなる


こんなに愛してるのに…





先輩に向けている俺の愛は

傘の涙のように分かりにくいようだ




〜end〜



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