*ケロロ軍曹

□冬のピアニッシモ
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〜冬のピアニッシモ〜




銀色の雪が早朝と庭を覆う

焚火をしながらハァと息を出すと白く霞んで消えていく


これほど寒くなると厳しいのだが俺はソルジャー、こんな事でへこたれては親父に呆れられてしまう


そういえば最近…



「くーくっくっ」

「またお前か」

「酷いっすね〜、またかなんて」



冬らしくなってから意図的に此処に来るようになっていた



「来ても何もないぞ?」

「先輩がいんじゃん」



いつもこうだ

俺がいるからって何が起きるんだ


図々しくテントの中に入って勝手にコーヒーを作り始めた

使い方自体は簡単なのだが今のクルルの手つきはどう見ても慣れている

ということは…



「く〜っ、やっぱり先輩が使ってる方のが美味ぇぜぇ」


テントに背中を向け、薪を二本焼べていると後ろから開放感のある声が聞こえた

そして俺の左斜め前のレンガに「冷たっ」と言って座った



「…それを飲むために来てるならメーカー教えてやる」

「取り寄せんのメンドイ」

「なら、くれてやる」

「此処で飲むから意味があるだぜぇ〜」

「意味?」

「そ、薄暗いラボん中に閉じこもって飲むよりもこうやって広い空を見ながら飲んだ方が気持ちいいに決まってるだろ?」



クルルは肩の力を抜いて果てしない空を見つめながら答えた

それを聞いて納得はしたもののまだ分からないことがある



「じゃあ、俺がいないときは来てないんだな?」

「ククッ…先輩がいないのに勝手に使うほど落ちぶれちゃいないぜぇ」



顎に手をあて不思議に想う

一枚の写真を取り出し眺めながら



「ん〜?…げっ」

「ガルルから送られてきたんだ…。信じたくはなかったが…」

「クッ…」

「これはお前だろう」



写真には、後ろ姿だが黄色い体にヘッドホンにクセだろう右手を口周辺にもってくる仕種が写っている

それを手渡すためにクルルに向けるが、持ちはせずチラッと見てはコーヒーを一口飲んだ

多少は動揺すると想っていたが予想より呆気ない気がした



「どうなんだ?」

「ま、俺だな」

「なら俺がいない時に勝手にテントに入ったのは認めるんだな?」

「ん〜」



まるで興味無さそうな、実際無いんだろう返答しながら斜め上を眺める

ちゃんと会話をしようとしないクルルに眉間にシワを寄せる



「無断で…いわゆる俺の領地、俺の家に入らないでほしい。軍人といえど俺にだってプライバシーというものはあるんだ」

「見られて恥ずかしい物があるとでも?」

「そんなもん、あるわけな……」

「ん〜?(ニヤニヤ」


バレてる…

引き出しの一番下の奥にある夏美の写真やローテーションで置かれている武器の陰に潜む袋の中にあるいつだったか手に入れた夏美のフィギュアやデスクの下に収納されてある用無し書類に紛れている623の俺ラジオに投稿しようとしたが没になり捨ててしまった夏美直筆のハガキとかが…

バレてる…


もしここで「ある」と言えばまた弱みを握られて生活しにくくなるし

「ない」と言えばまた勝手にテントに入ってくるし、アレらが見つかるのは時間の問題だ



「……あるわけないだろう」

「目ぇ見て言えよ」

「…な、ない…」

「はっきり何が無いのか言えよ」

「俺がこっそり隠している夏美コレクションなんて無いっ!」





あ…






「ククッ」



キレイに墓穴を掘った

それに気付いたのは叫んだ後、矢に射られたような衝動のように遅くはなかった

文字通り真っ白になった俺は微かな意識の中で聞こえたものがある





「知ってるつーの」という言葉



そして今でもコーヒーを飲みに来る




〜end〜



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