*創作(オリジナル)

□中ブレーキ
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午前2時。

町外れに潰れてしまった大きめのパチンコ屋の中から足音が響く。

それも一人二人ではないようだ。


チャ〜チャッチャラ〜♪
チャ〜チャピッ……


電気管理室から着信音が聞こえる。



「ちっ…何なんだよ…!」



彼は篠山 誠(シノヤマ マコト)。

友人三人に「廃墟となったパチンコ屋で肝試しよう」と誘われそして始めて間もなく遠くの方でガシャン!と音がした瞬間に全員が悲鳴を上げながらバラバラに逃げてしまって今に至るのだ。

早速携帯を開くと奇妙なメールが届いていた。



宛先:海斗
件名:(non title)
−−−−−−−−−−−

今スッゲェ怖いヤーサンがいた!
そしたら
「誠は何処だ?」って聞かれた!
おまえの知り合いか何かか?
知り合いじゃねぇならマジヤバイから気をつけろよ!

−−−−−−−−−−−


逃げた友人の一人、海斗からのメールで先程まであった寒気が増した気がした。


俺を探している?

観つかったら確実フルボッコだな…。

俺、なんかしたかな?


そう考えながら「了解」とだけ記した返事を送信した。

むやみに動けない中どう移動しようか考える。

手元にあるのは財布と携帯だけ。

すると廊下から足音が聞こえる。

息を殺しそのヤーサンでない事を祈るしかなかった。


「…ここにもいないか…」


聞く耳がおかしくなければこの声は友人の誰にも当て嵌まらない。

という事は…あのヤーサンだ!

殺されると想ったら怖くて震えが止まらない。

今ならお化けなんて怖くないを倍速で歌えるっていうくらいの恐怖に包まれた。


早く通り過ぎろ…!

お願いだから向こう行って…!


心の中で何度も叫んでいた。

すると靴音が再び鳴り小さくなっていく。

どうやらいなくなったようだ。

その安堵感でどっと体が楽になった。



「…よかった〜」



安心しすぎて声が出た。

もう誰もいないから大丈夫。

…なはずだったが、


ガチャ…

「?!…」



誰かがこの部屋に入ってきた。

いきなりではあったが必死で驚く声を押し殺し入口近くの机の下にしゃがみ込んで両手で口を押さえている。


コツ…コツ…


ゆっくりと部屋を歩いている。

誠が隠れている机の前を靴音が通る。


「?…確かに声が聞こえたが…」


あの靴音が遠ざかっていくのは罠だったようだ。

気配を感じられないようまだ体を強張らせ男がいなくなるのを待つ。

しかしなかなか出ていってくれない。


キィーッ…


窓を開けたようだ。

少し温かい風で部屋の空気が換気される。


カチッ…

ボゥ…


…フゥー


匂いと音によって煙草を吸ってることが分かった。

誠はあまり煙草が好きではない。

だから今は噎(む)せたいが声を出したら殺されるため我慢をする。

この空間から逃げ出したくて周りを観ると部屋のドアが開いている。

あの男が入る際に閉め忘れたのだろう。


「(…これは逃げるチャンスだ!)」


そう想いゆっくり音を立てないように忍び歩く。


「(よし、よし!気付いてないぞぉ…)」


ドアを少し開けるときに音が鳴るのは仕方ない。

だから開ける時から一発勝負。

浅く呼吸をしてこれから走るための心構えをする。






チャ〜チャッチャラ〜♪

「「!?」」



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