企画
□優しい嘘
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ずっと好きだった深津くんと付き合って、もうすぐ一か月。
彼は私を、はたして好きなのか。最近、そんなことを考える毎日。
深津くんは、私のこと……多分嫌いじゃないと思うが、そこまで好きな訳じゃないと思う。
だって、彼の一番はバスケだから。
それを分かってて…2番でいいから付き合ってなんて、面倒くさいことを言ったのはアタシ。
だから好きだの嫌いだのとぐちぐち悩む私は、多分矛盾だらけ。
「あ、深津くんだよー!」
頬杖をつきながら、ぼーっとしていたアタシに、ふと聞こえたクラスの女子の声。
さっきまで悩んでいたのはどこえやら…
アタシは素早く立ち上がると、窓の方にダッシュする。
中庭には、やっぱり大好きな彼の姿。
何度も諦めようと、この恋とさよならしようとした。
けれども、彼の姿を見ただけでそんな悩みは、ガラガラと崩れてどこかにいってしまうんだ。
「深津くーん!!」
だから私は、今の彼女というポジションを満喫する。
今だって、満面の笑みとともに手を振ってる自分がいるのだ。
「ピョン〜」
私に気付いた深津くんは、にっこり笑って手を振り返してくれる。
たとえ私たちの関係が、偽りだとしても
彼の優しさからきている、嘘の現状だとしても
それで良い。
それでも彼が好き。
優しい嘘