企画
□キラキラ
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手の届かないものだと思ってた。
だって、住む世界自体違う。
そんな非現実的な出来事が今、あたしの目の前で起こっている。
あたしは今夢でも見ているのでしょうか。
「お前さ、人の話聞いてんのか?」
「え?…あー、き、聞いてた、よ?」
「なんだよその歯切れ悪い返事はっ」
思わず意識を飛ばしかけていたあたしを現実に引き戻した張本人は、大袈裟に溜め息を吐いた。
ちなみに、あたしが意識を飛ばした原因となったのもこの人物だったりする。
「う、嘘よね?」
「なんでこんなことに嘘つかなきゃなんねーんだよ」
「まぁ、それもそうよね…」
これが嘘だったらどんなに楽だろうか。
だって、あたしのこれからの高校生活が上手くいくかが、この究極の選択によって左右されるかもしれないのだ。
出来ることなら避けて通りたい。
彼に気付かれないようこっそり溜め息を吐いて、あたしはまた彼に向き合った。
「で、俺と付き合うのか?付き合わないのか?」
「そんなの…普通、今すぐ決められるわけないじゃん」
「普通って、何を基準に?」
また、あたしの口からは溜め息が漏れる。
今度は彼にも聞こえるくらい、大きく吐いてやった。
こ、この俺様王子め…
「じゃあ…付き合わない」
「なんでだよ」
適当に答えたあたしの言葉へ、間髪を入れずに返ってきた彼の言葉に、あたしは一瞬怯んでしまった。
だって、彼の目が声が…さっきと違う、あまりにも真剣なものに変わっていたから。
そうかと思ったら、今度は悲しそうに揺れている。
その時、
不覚にも彼にもときめいてしまったんだ。
なんだよその目
反則。
さっきまでなんとも思わなかった彼の姿が、急に輝き始めたのは気のせい、だよね?
キラキラ
それは恋が始まる瞬間に、一瞬だけ光るもの。