企画
□君を待つ。
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なんでこの思いは伝わらないんだろう。
付き合ってるはずなのに
彼はあたしが好きなはずなのに
毎日一緒に帰ってるはずなのに
手だってたまには繋ぐし
キスだってしたことないわけじゃないのに
なのに
付き合う前の方が…片思いしてただけだった方が
なんだか良かった気がするのは気のせい?
この思いが一方通行な気がするのは気のせい?
「で、お前はどうしたいわけ?」
「どうしたいって…」
「藤真に毎日好き好き言われたいのか?」
「いやー、そういうわけじゃなあけど」
練習前に花形くんを捕まえて恋愛相談に持ち込んだのはいいものの、いざ具体的なことを突き付けられると言葉に詰まる。
というか…不満をぶちまけただけですっきりしてしまって、全然その先を考えてなかった。
「藤真は、お前のこと大好きだと思うぞ?」
「そお?なんか違う気がする…」
「どうしてだ?」
「健司くんは、バスケ一筋だし…あたしは浮気相手、みたいな?」
「なんだそれ」
よほどツボに入ったのか、お腹を抱えて笑う花形くんをちょっとだけ恨めしげに見つめる。
「なんか最近思うんだよね。健司くんに好きって言われてた記憶ないなぁって」
「やっぱり、そんな風に言われたいんじゃないか」
「違うってば」
不満げにむぅと頬を膨らませれば、花形くんはぽんぽんとあたしの頭を撫でる。
同い年のはずなのに、なんだかこっちが子供みたいだ。
それにまたむっとしていると、あたしの頭の上にすっと影ができた。
「お前は、誰の許可を貰って人の彼女の頭を撫でてんだ?」
今まで聞いたことのない低い声が聞こえたと思ったら、さっきまで頭の上に乗っていた花形くんの手が離れていくのが分かった。
何ごとかと、影の正体を探るべく後ろを振り向く。
「健司くん」
「藤真」
花形くんとハモりながら彼の名前を口にすると、彼は不機嫌そうに眉をぴきりとつり上げる。
そうかと思ったら、グイッと腕を掴まれて健司くんの胸へ引き寄せられる。そして、まるでばい菌にでも触られたかのように、グリグリあたしの頭を撫でつけ始めた。
「花形、お前は誰の許可を得て人の彼女と喋ったりしてるんだ?」
「ち、違うよ、健司くん。あたしから話し掛けた…うぷっ」
なんとか弁明しようとしたら、さらに強い力で胸に押しつけられる。
まるで抱締められてるかのようなその体制に、不謹慎にも胸が高鳴った。
「いいか?今後一切、俺以外の男と口きくなよ」
そしてそんなことを言うもんだから、さらにバクバク心臓がうるさかった。
君を待つ。
好きって言ってくれるまで、何年でも待とうって気にさせてくれる。
そんな焼き餅焼きなあなたが大好きです!
そして忘れられた花形くん。