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□ブロークン ヒューマンズ
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ブロークン ヒューマンズ


「エクソシストなんて、止めちゃいませんか」

そう言ったアレンの目の前には雄大な海が広がっていた。
その海の光はキラキラとアレンに反射し降り注ぎ、まるでそれは導(しるべ)のように俺の目の前にあった。

俺は、今までのこいつだったらあり得ない科白をさらりと言ったその口を、じっと見つめた。

「もうこの世界なんて飽き飽きです。ねえ神田、僕と一緒に逃げよう。この海の向こうに、空の彼方に。」

歯が浮きそうな言葉を、生き生きとした口調で話すこいつはどこか遠い世界の人間に見えた。
…いや、そもそも人間だろうか。
あんなにいつも隣にいたのに、なんだろうか、この距離感は。

アレンは呆然とする俺を見て、くすりと笑い、そして俺の隣に腰掛けてきた。
いつも通りに、でもどこか不自然に。

「殺し合いの中で生きるより、ねえ、自分の命の中で生きよう。」

フワフワと夢心地に話すその口がぼやけたように俺の瞳に映る。
それに引き寄せられるように、俺の口は言葉を引き出した。

「俺、は」

「今までのお前がいい」

俺は

適当な事を言って、ケンカしたあの日がいい
初々しく手を繋いで、森を散歩したあの日がいい
たわいもないことで笑えた愚かなあの日がいい

そんな風に壊れたように笑うお前は、


「、イヤだ。」


壊れてしまった壊れてしまった全て壊れてしまった。
探し求めた愛情も、何もかも。

どこから壊れてしまっただろう、彼か?身の回りか?仲間?世界?
もうそんなことさえも解らない、どこかにおいてきてしまった。


「…………そっか、」

そう言って、ふと目を背けたアレンは

「あなたなら、ぼくといっしょに来てくれると思ったのにな」


やっと初めて、切なげな笑顔をした。

俺の心臓が、途端によく働くようになった。
ドクドクと。うるさい。

俺は、俺は。
どれだけコイツが壊れていても。

好きだ。
こいつが。




そして俺は。

その躊躇な体を、抱きしめていた。

それは衝動だったと言い切れる。
その顔を見たがための。


ああ、アレン。お前は解ってたな。
もう後ろなんて見れないこと。だから。お前も壊れたんだな?
辛くないように。

過去に縋り付いてた俺は愚かだな。
もう戻れないのに。
今、やっと解った。



なら、俺は。


「……いこう、アレン」





お前と一緒に、

「 愛 を 探 し に 」




歩いていくだけだ。






それは。

世界を捨てた神の使徒たちの物語。
咎に身を染めても、それでも愛を探し続けた戦士の物語。


世界は壊れた。
だから、彼らも壊れてしまった。
ヒトがヒトを殺し、殺されたヒトを思いそしてアクマになり、アクマがヒトを殺す。
青かった惑星はいつしか真っ赤に染まっていた。
血と、炎とで。
綺麗な夕焼けさえも、青空さえも、すべて。

逃げよう、逃げよう。
壊れた裸足でもいい、溶け合いながら、俺たちは愛を探そう。
一緒にいようじゃないか!


本当に、世界が終わる瞬間まで。

ずっと。




*イノセンス争奪戦争と世界大戦が併発した世界の話。
アレンは守るべき存在に絶望し、神田は世界に絶望してしまったアレンに、
そして自分に壊れた世界を見せないように逃げまどうのです。
そして最後は世界は無くなる。そんな感じ。
なんか、最終兵器彼女みたいになってる…orz
アレンの性別は特に決めてないです。男の子の方がしっくり来るかな。
タイトルがヒューマンズなのはピープルだとなんかおおざっぱすぎてヤだったから。ここでは此処の物が一杯集まった物として考えてます。決して英語が苦手とかそう言うのではなく。

ちなみに隠れテーマソングがスピッツの愛のことば。

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