NOVEL
□そばにいるだけじゃ足りなくて。
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「ヤバい…遅れる!そんで咬み殺される……」
沢田綱吉は、懸命に走っていた。
雲雀恭弥との待ち合わせの場所まで。
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「ねぇ綱吉、たまには出掛けたりしない?」
「はい?」
それは綱吉と雲雀が一緒に下校中の時の出来事から始まった。無言で歩いていたなか、雲雀がいきなり「出掛けない?」なんて言い出した。綱吉はきょとんとした顔で、雲雀を見つめていた。
「お出掛け…ですか?」
「うん、駄目なの?」
綱吉はおもいっきり首を横にふった。
「いえっ!全然そんなことないです!むしろ嬉しいくらいですよ…雲雀さんと二人っきりでお出掛けが出来て……」
綱吉は「えへへ」と照れながら雲雀を見つめながら微笑んだ。雲雀にはそれがたまらなかった。
なんて、愛くるしい。
―――この綱吉の微笑みが見られれば、僕は満足だったんだ。
でも…いつからだろう。
これだけじゃ物足りなくなって、綱吉を僕の物にしたいと願うようになったのは。
「じゃあ…明日、9時に並中ね」
「はいっ!」