反逆連載2(r2編)凍結

□エデン〜僕等の理想郷〜
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彼女と出会って間もない頃は彼女の事が本当に苦手だった。その頃は、周囲に対しての警戒心が強く、誰に対して、特にブリタニア人には好意的ではなかった。たとえ、それがどれほど善良に見えても。


―――善良?そんなものが何になるというの?



ブリタニアが自分とルルーシュ達にした仕打ちを、ブリタニアがここエリア11、嘗て日本と呼ばれた国の人々に対してした仕打ちを、自分は知っている。


――貴方達が纏っている服も、食べているパンも、住んでいる家も、全てブリタニア以外の人間の血と犠牲、いや、弱き者達の犠牲の上に成り立っているというべきか。



いい気なものね。



自覚のない罪人は自覚のある罪人よりたちが悪い。彼等は侵略者。彼等はたった一人の友人、スザクの故郷であるこの国を滅茶苦茶にした奴等。そのくせ、無邪気な顔で栄華を満喫する。こんな連中と同じ人種に生まれ、同じ血をひく自身が疎ましい。



彼女は…シャーリー・フェネットという少女はその典型に当てはまった人間に見えた。明るく活発で、面倒見がよく、たえず人に囲まれた偽善者の塊のような人柄。サラからすれば反吐がでるほど嫌いな部類の人間。



――――ブリタニアという強大な国の前では無力な存在でしかない私を嘲笑っているような気がして彼女という存在が嫌だった。


「そういう言い方はやめようよ、スタンフィールドさん。ルルーシュ君だって、協力してくれてるんだし」


鮮明に覚えている彼女との会話の一部分。最初はルルーシュも彼女に対して嫌悪感を抱いていた筈なのだが、気付けば彼の方が先に彼女を受け入れていたではないか。この事にサラは焦りを感じた。もしかしたら、ルルーシュは自分を捨て、シャーリーのもとへいくのではないか。



「ルルーシュ君って格好いいよね?彼女とか居るのかな?」


「さあ。でも、スタンフィールドさんとは怪しい感じだよね?」


彼女と同級生の会話を偶然聞いてしまった時、凄まじい衝動に駆られた。それが嫉妬だと直ぐに理解出来た。彼女、シャーリーはルルーシュに恋心を抱いているのだと。だから、余計に彼女の事が嫌いになった。だからそう、あの時も。



「スタンフィールドさんはこういう活動って嫌い?」



あの頃は彼女と同じクラスで同じ委員で、その委員会の活動の一環である募金集めをしていた時の事だった。サラは立場上、学園で目立つ訳にいかないがそれでもそれなりに真面目にやっていた方だろうと思うが、内心は馬鹿にしていた。

募金?貴方達がそうやって出す端金にしても、多くの人間を踏みにじって手に入れるものでしょうに。


一方で彼女は活動に熱心だった。クラスメイト達に何度も呼びかけ、理解も訴えていた。そんな彼女の懸命な姿に勿論心打たれる筈もなく、ただ無性に苛つき、らしくもなく自制を忘れ、皮肉めいた事を口にしてしまった。だが、どのような事を口にしたかは覚えていない。ただ、それを聞いた彼女が真剣に怒った。


「スタンフィールドさんはこういう活動って嫌い?」


「どちらかといえば、嫌いね」


素が出てしまっているせいで、出てくるのは刺々しい一言だった。しかし、何故か彼女から怒りが消え、いつも活発な少女の顔だった。


「私はね、結構好きなんだ。それは確かにスタンフィールドさんの言うとおり、私達は自分でお金を稼いでいる訳じゃないし。此処に集まったお金も、お父さんやお母さんがくれたお小遣いから出したものばっかりなんだろうけど」


そうだ。確か、その辺りを突いて皮肉を言ったんだった。


「でも―――みんなが自分のやりたい事とか欲しい物とかをちょっとだけ我慢すれば、それだけで凄く助かる人が居るのは本当なんだよ?そういうのって、何か嬉しいじゃない。自分達のしたことで、誰かが笑ってくれると思うとさ」
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