魔法連載

□闇と金の蛇
1ページ/50ページ


タイトル『闇と金の蛇』







〜闇と金の蛇〜





日刊預言者新聞のみ出しを見て、私は盛大に眉を顰めた。

記事には特に何も書かれていない。三校対抗試合で起きた

あの出来事も。




「そのような、紙屑を見てないで、俺様をみたらどうだ?」



広げている新聞を折り畳み、私は下に目線を落とした。視界

に入るのは、鮮やかな紅い瞳。

今、目の前で繰り広げられている光景を闇祓い達や死喰い人

達が目の当たりにすれば、さぞかし驚かれることであろう。

魔法界で恐れられている、闇の帝王ともあろう御方が、女

の膝の上に頭をのせ寛いでいようものなら・・・。



「兄様、膝が痺れてきました・・・。そろそろ、その頭をお

ろしていただけませんか?」




人の膝に頭をのせ、のうのう寛ぎ始めてからもう二時間経った。

こうなったのも、ある一言からであった。

事は二時間前に遡る・・・





ホグワーツから戻り、夏の休暇に入った二日後、私は兄に呼び

出しを受けた。

マルフォイ家から兄の隠れ家である屋敷まで姿現し、参上した。

挨拶を述べ、用件を尋ねる。すると、この兄はとんでもない事

を口走ったのだ。




『膝枕をしろ・・・』



開いた口が塞がらなかった。一瞬、錯乱の呪文にでも掛っている

のかと思ったが、本人はいたって正常のようだ。

私は意義を申し立てたが、ある一言に押し黙った。




『あの時の、処罰だ・・・』




あの時とは、あれだ。ポッターを取り逃がした時の件だ。確か

あの時、兄は処罰は後日だといっていた。しかし、その処罰が

膝枕などとは・・・




そして、冒頭に戻る




兄の自室に備え付けられている、ロココ調の重厚な椅子に腰を

おろし、膝枕をしてもう軽く二時間が経つ。

処罰とはいえ、膝が限界に近い。処罰という言葉がつかなけれ

ば今すぐにでも、振り落としているところだがそうは問屋がお

ろさなかった。

折り畳んだ日刊預言者新聞が何時の間にか、兄から奪い取られ

てしまっていた。

長い腕を器用に伸ばし、私の手から新聞を取り上げ、無造作に

そこ等に放り投げる。

少しでも、気晴らしになるだろうかと読み始めた新聞が取り上

げられてしまい、私の気晴らしする道具は完璧無くなってしま

った。

恨みがましい目を向けても、兄は愉快そうにクツクツと笑いを

たてるだけ。膝の痺れが限界に近づいてきてるだけでも、私の

苛々は募っているというのに、そのような、気に障るような事

をされてしまえば、ますます苛々を募らせた。

しかし、此処で抵抗をしていしまえばどうなるかわかったもの

でもないので、なんとか自分の内なる怒りを押さえ込む。




「怒っているのか?」



「わかっているのなら、今すぐこの頭をおろしてくださいな」




わかってやっているので、なおの事性質が悪い。



「悪いが、サラ。それは出来ぬ。御前は今、罰を受けているの

身なのだ。その御前が苦痛な思いをするのは当然の事であろう?」




「それはそうですが・・・。しかし、兄様。でしたら、磔の呪文

なりかければよろしいでしょうに。」




このような、長時間の罰則をくらうならば、磔の呪文の方が

遥かにましというものだ。

あれは一瞬だけの痛みであって、このような長時間の連続の

痛みはないのだ。




「愛しい御前にそのような事が出来ようか。俺様が御前に磔の

呪文など・・・。サラ、御前は俺様にとってただ一人の絶対的

な存在なのだ。俺様は、サラ。御前いがいはただの使い捨ての

駒にすぎぬ存在なのだ。俺様は御前いがいの人間を信用出来ぬ。

死喰い人どもには酷く失望した。もとから、信用などしておら

ぬが、あの時の件でそれに拍車がかかった。あいつらに、俺様

の背中が預けれようか・・・。サラ、御前いがいに素を曝せる

者はこの世に存在しないのだ・・・。御前は、俺様の宿木だ。」




普段は鋭く、無慈悲な紅い瞳孔は今はただ、優しく、だが哀し

みを宿している。

ゆっくりとその、透けるような白く繊細な手を私の頬に当てる。

温かさを感じさせない手。私は瞳を細め、兄を自身の瞳に捉え

た後、頬に当てられている兄の手に添えた。



「兄・・・いえ、ヴォル。それは私とて同じ事ですわ。私がすべ

てを曝け出し、その背中を預ける事が出来るのは貴方だけです。

ルシウスでも、プルートでもない。貴方だけです・・・」




「俺様達は、一心同体だサラ。」




「すべては、貴方様の物・・・」





この世を闇へと再び染め上げよう




共に、歩みながら






Created by DreamEditor
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ