図書
□充電
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やっぱり、寂しい。
側にいられたら。
せめて、一目顔を見られたら。
10分でいい。
見つめる事、30分。
電話の電池は、残りあと一つ。
*充電
昼休み。
ぼーっと学生食堂で過ごす。
考えるのは、夏休みの事。
帰って来れると話していた黒崎くんが、やっぱり帰られなくなってしまった。
1年生のうちに、夏の集中講義を受けておきたいらしく、残念そうに昨日電話があった。
その後すぐ、遊子ちゃんと夏梨ちゃんからも電話とメールがあって、その時は気が紛れたけれど…。
『いいよ、気にしないで』
それしかその時言えなくて、一人になると、やっぱりまた考えてしまう。二人で迎える初めての夏だから、色々やりたい事を私なりに考えていた。高校生じゃない、新しくて久しぶりの黒崎くんに、何より会いたかった。
直接、黒崎くんに言えなかったけど、夏休みがあるから、これまで何とか乗り切っていた。何とか頑張れた。
あんまり喉を通らないナポリタンが、なんだかだんだん太くなってきたような気がして、そろそろ席を立とうかなと思った時だった。
「井上さーん!」
学籍番号が隣で、入学してすぐ仲良くなった内山さんと…何度か見掛けた同じ学科の子達だった。
「一人?ここ、一緒にいい?」
「あ、うん。どうぞ。」
「ありがとう〜。」
私一人だったテーブルが、急に花が咲いたように賑やかになった。今は、この賑やかさが嬉しかった。
「あ、そういえば次休講なんだよ!見た?掲示板。」「見てない!本当?」
「うん。井上さんは?知ってた?」
彼女たちの次々跳ぶ話題に付いて行くのがやっとだったせいで、乗り遅れていた。
「あ、知ってない!」
沈黙。
「あはははははっ!!」
「ふふふふふっ!」
「はははっ!!」
皆大爆笑していて、始めは気付かなかった私も、笑いながらやっと気付いた。
何言ってんだ、私。
「井上さん、サイコー!」「いいわ〜そのキャラ!」「井上さんってさ、そういえば彼氏いるの?」
胸が少しだけ高鳴った。