宝物

□そばにいて
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コンコン。

「悟浄……もう寝た?」

ガチャッ

「翡翠?」

「何だか眠れなくて」

「また怖い夢でも見た?」

困ったように笑う私を優しく抱き締めてくれる悟浄の腕は温かくて、とても安心する。

「ごめんね……遅くに」

「可愛いお姫様の来訪なら大歓迎よ」

部屋に足を踏み入れると、ハイライトの香りが鼻孔を擽る……抱き締められた時に感じた悟浄の服に染みついた香り。

「煙草吸い過ぎ」

思ってもいない事を呟くのは照れ隠し。

白く煙った空気を入れ替える為に開けた窓は、紅く熱った顔を見られたくないから。

「コーヒー飲む?」

「……ううん」

「何かあったか?」

「ううん」

「うちのお姫様は嘘をつくのが苦手だからな」

悟浄に引かれた腕は抵抗する必要がないと言わんばかりにソレを許し、悟浄の腕の中に体が収まるとうつ向くように顔を胸に埋めた。

「本当に何もないの……ただ眠るのが怖くて」

「顔上げて?」

「いや」

「翡翠?」

悲しくないのに涙が溢れるのは……


どうして?


‥そばにいて‥



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