妄想小説V*

□●雨がやんだら●
1ページ/6ページ

●雨がやんだら●



「全く、なんだかなー。」




 締め切った窓、開ききったカーテンをもってしてもリビングは薄青かった。壁一枚を隔てただけの外の音も、遠くから聞こえるそれのように柔らかく、うっとおしかった。


 ラクスさんと、遊びに出かけようと思ってたのに。


 子どもみたいに拗ねた表情で舌打ちしても、ソレをどこへ向ければいいのか。
 雨は相変わらずしとしとと水音をシンへ届ける。


 買い物して、ちょっと町をぶらつくとか。

 女の子の喜ぶお店で、待ちぼうけを喰らうとか。

 俺の服を裾を引っ張る小さな手を握るとか。



 妄想がちゃんとあるってのに、どうしてくれる?


 睨み付けても、窓の向こうの雨はもちろん何も変らなかった。

                
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ