◆唄◆
□One
1ページ/1ページ
時々すごく、泣きたくなるんだ。
見えていたものがあって。
触れられたものがあって。
微笑めば笑ってくれるし、声をかければ振り向いてくれる。
当たり前のようなもの。実際、当たり前のもの。
だけどそれが壊れてしまったら、私は一体どうなってしまうのだろう。
痛みを知ることはまだないけれど。
苦しむこともまだないけれど。
それでも、ふとした瞬間に、涙が零れそうになる。
バカみたいだなぁって思ってしまうけど。
見えないからこそ、知らないからこその恐怖っていうのも、やっぱりあって。
それがもし、忘れてしまっただけであっても。
…忘れてしまったからこそ、思い出すことを拒んでいるのかもしれないのだけれど。
助けて欲しいなんて言わない。
私と一緒に泣いてとも言わない。
ただ、わかって欲しい。
失ってしまったら、もう手に入らないのだと、信じてるから。
時々、すごく泣きたくなるとき。
君が傍にいてくれれば、それだけで、いいから。