捧げ物

□君を忘れられなくて   16500hit 愛瑚様へ
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俺はあいつが好きだった。

高校在学中、喧嘩はするがあまり込み入った話なんてした事なくて、卒業する前になって漸く、俺はあいつに進路を聞いた。答えは大学進学。心の中でガッツポーズだった。
しかし「秘密アル。」そう言って、あとは何も教えてもらえなかった。

卒業式の後、俺は教室でクラスの奴等と別れって程でもないが話をしていた。あいつも女子の輪に入って話し込んでいた。
あいつの声は良く通る。聞き耳を立てていたわけではないが、あいつの声は拾ってしまう。
そして俺は愕然としたのを、今でも鮮明に覚えている。

「私、中国に帰るアル。ビザが切れちゃうネ。」

その日、想いを告げようと思っていた俺は、頭が真っ白になった。
あいつの日本にいられるタイムリミットと共に、俺の片想いも幕を閉じた。





それから大学生になった俺は、なんの面白味も感じられないまま、淡々と日々を過ごしていた。
相変わらず、近藤さんと土方さんと一緒に。

「総悟、総悟!」
「なんですかィ?近藤さん、そんなに慌てて。」
「今日、合コンがあんだけどよぉ、一緒に行ってくれ!頼む!!」
「嫌でさァ。めんどくせぇ。土方さんでも誘えばいいじゃねぇですか。」

大学に入って、頻繁に合コンの誘いが来る。主に近藤さんからだが・・・たまに付き合い程度に参加するも、何一つ楽しくない。

「トシはもう誘った。あと一人足んねぇんだよ。な?今日は、隣の女子大だぞ?お嬢様だぞ?」

俺らの大学の隣には、金持ちしか入れないような、女子大がある。
俺にはそんな女のどこが良いのか、わかんねぇけど。

「一人ぐらい足りなくたって、大丈夫でしょ?」
「いいや!ダメだって!こんなチャンス滅多に無いんだ、ホント頼む!このとおり!!」
「諦めろ、総悟。今回の近藤さんは一歩も退かねぇぞ?実証済みだ。俺は30分戦ったがダメだった。」

近藤さんの背後から、くわえ煙草で近づいて来た土方さんが言った。

「ったく、仕方ねぇ人でィ。ハズレだったら途中で帰りますぜ?それでもいいなら行きやす。」
「いい、いい!それでいい!ヨッシャ、これで揃った。楽しみだなぁ。」

正直、あれから2年も経つのに、あいつの事を引き摺っている・・・。どの女もあいつ以上なんていないんだ・・・。
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