捧げ物
□いつだってお前は俺を掻き乱す 27500hit 鰺様へ
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こんな自分、知らねぇ・・・。
俺はいつだって冷静だ。冷静な筈だったんだ・・・。
『ごめん!明日、依頼が入っちまったんだ。ものっそい頑張って早く終わらせるから!本当にゴメン!』
休みの前の夜、携帯に銀時から掛かってきた。電話の向こうで必死に謝っている銀時に俺は少し苦笑する。
だってそうだろ?
俺なんか、休みの日に仕事が入るのなんてしょっちゅうだ。なのに、たった一回仕事が入っただけでこんなに必死で謝られると、こっちが申し訳なくなる。
「気にすんな。折角の依頼なんだ、しっかり働いてこいよ?」
『ゴメンね、十四郎・・・。絶対、早く終わらせるから!!銀さん、頑張るから!!』
「おう。んじゃ、終わったら飲みに行こうぜ?お前の奢りで。」
『よし!埋め合わせに奢っちゃる!じゃあ、終わったら連絡するね。おやすみ、十四郎。』
「ん、おやすみ。」
まぁ、久々に昼ぐらいまで寝るか・・・。
そうして俺は眠りについた。
次の日、目が覚めたのは9時で、いつもより遅いと言えば遅いが、結局、朝に目が覚めてしまった。
「2度寝・・・は出来ねぇなぁ・・・。」
仕方なく布団から起きて、身支度をする。食堂で朝飯を食べて、部屋で一服する。
部屋でダラダラと過ごすのも無駄な気がして、健康ランドで日頃の疲れでも取りに行くことにした。
「そういや、山崎に無料券貰ったな。新しく出来たんだっけか?」
券を取りだし場所を見ると、吉原の目と鼻の先だった。
「微妙に遠いな・・・。まぁ、折角だし行ってみるか。」
タクシーを拾い、場所を告げる。目的の場所に近づいた時、遠くから見ても見間違うことのない銀髪が、女と二人で歩いていた。
「銀時・・・?」
あれが依頼主か・・・?
健康ランドに着くと、俺はそこには入らず、近くの物陰に隠れた。
疑ってる訳じゃねぇ・・・。ただ・・・女とやたら親しげだったから・・・。
数分経つと、銀時は俺の前を通り過ぎていった。
知り合いなのか・・・?
女は『銀時』と呼んでいて、中々に別嬪だった。
「依頼・・・だよな?」
銀時の向かった方を見ると、そこは吉原の歓楽街の入り口で、俺は拳を強く握った。
「吉原・・・か。依頼だ依頼。大丈夫、銀時が浮気なんかする筈ねぇよ。」
そう言い聞かせて、俺は健康ランドには行かずに、そのまま屯所に戻った。
大丈夫な根拠なんて何一つねぇよ・・・・・・。