宝物

□土方コノヤロー
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土方Side

ため息がもれる…
仕事が身に入らない…

「はぁ…どうやすれば良いんだよ…」

せっかくの誕生日だと言うのに…

そう、今日は5月5日
俺の生まれた日だ
あ、今日誕生日の人おめっとさん!
同じ日に生まれたなんて奇遇だよな〜、なんて話してる場合じゃねぇんだよ

昨日、総悟との事情後…こんな会話をしたんだ


「…総悟、俺もう寝るぜ?」

布団をかけ直して総悟の胸におさまる

「…土方さん?
あんた明日誕生日だろぃ?なんか俺にして欲しいことないんで?」

半分は寝かけている俺に問い掛ける総悟

「……ぁ、明日誕生日か…ん、どうだろぅ…な…考えとく…すー…」


…で、今に至るわけだ

しかも今日は事件が起こるわ、起こるわで大変忙しい
それでも近藤さんは休んで良いぞ?なんて言ってきた

…無理だろ?
とても休んでなんていられない…

「副長っ!!『でにぃす』で立て篭もり事件です!」

…ほらきた
ったく何が楽しくて立て篭もんだよコノヤロー

「…分かった、車出せ!あと、一番隊に連絡いれとけ」

「分かりました!」

隊士が車を取りに向かって行ったのを見て、隊服の上着を着て門に向かう




10分ぐらいして目的地の『でにぃす』に到着

傍にいた隊士に現状を聞く

「オイ、現状は?」

「はい、犯人は通行人の女性を人質に、およそ30分要求なし応答なしで立て篭もっています。凶器は拳銃を一丁と、鉈のようなものを持っていたと目撃情報がありました。今だ犯人、女性の顔はわれていません」

瞬時に頭に記憶し、どう攻めるかを考える

「…要求はない、か。
犯人は何が目的で…?」

独り言のようにぶつぶつと思いを巡らせていると、サイレンの音が近づいて来た

荒々しい足音が俺の後ろで止まる

「副長、一番隊は隊長以外到着しました!」

「は?総悟は?」

「…連絡をとったんですが、繋がらないんです。屯所にもいないんで…」

…隊長がいないってどういうことだよ、マジで

山崎は任務でいない…近藤さんは昼から上のやつらに呼び出されてたしよ…これはついてないとしか良いようがない

その時…入口付近で様子を見ていたであろう隊士が駆け寄って来た

「副長…男の人質がもう一人いることが分かりました。良く見えないので詳細までは分かりませんが、その男が説得…と言いますか…あの…」

土方は口ごもる隊士に苛々が募り、ついつい怒鳴ってしまう

「…だあぁぁあぁあぁっ〜!!!
言うならさっさと言いやがれっコノヤロー!!」

隊士は土方のその顔の迫力、声のインパクトに一瞬びくつき、なおも言いにくそうに俯く

その行動すらも許せないと言うように土方は隊士の顔を掴むと自分の方にグイッと向かせる

「…っ!!…」

隊士は土方と間近で目が合ったため、ほんのり頬を赤く染め目を逸らした

「…あんだぁ?てめぇ喧嘩売ってんのかコルァ…」

地からわきだすような低い声を出す

「…すすすすいませんっ!!
ひひひ人質の方がどうも沖田隊長に似てるんです!!しかも妙な動きが見えるんです!!」

そこまで一気に言い終えると深呼吸を繰り返す隊士

土方の頭はこの話しを瞬時に理解することは出来ずにいた

ただ間抜けな声が少しもれただけ…

「……ぇ…?…」

頭が理解する前に身体は『でにぃす』の入口を目指して進んでいた

…だから誰も見てなかったのか…
なんて考えながら、目を凝らして店内を覗く

何か黒い影のようなものが3つ動いている
あ、詳しく言えば…動いているのはほぼ2つだけ
動いていない影は髪を2つに束ねているとこから見て女だろう
残りの2つは不思議な動きをしている

ん?なんか聞こえてくる…

耳に意識を集中させる

ボソボソ…ヒソヒソ…

言葉としては聞こえないがもう少しで聞こえそう

「………て…なかっ…ほんと……で?…」

声色からして推定…30ぐらいの男の声が微かに聞こえてくる

「……え、マジマジマジ?女じゃねぇの?」

「馬鹿にすんなよ!私はニューハーフよ」

「…え゙っ!マジですかぃ…最悪でさぁ〜こんな男女と同じ空間でいると思うだけで吐き気がするって言うのに…おえっぷ…」

…!!!!!!!!
いた…いたよ…マジかよ…てか普通に喋ってんじゃねぇよ…
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