柳生夢*
「あ、やば…」
授業中シャーペンの芯が切れ、芯の入ったケースを見ると、中は見事に空だった。
あたしの使っている芯は0.3のかなり細いやつで、普通の人はまず持ってない。
けれど、こういう時って誰かに聞いてみたくなるもので。
「ねぇ、柳生。」
隣りの席に座る彼に声を掛けた。
「はい、何でしょう。」
その顔を見ただけであたしの心臓はバクバクだ。
「あのさ、0.3のシャー芯持ってない?」
断られるのを前提で聞いたのだが、
「えぇ、ありますよ。」
「へっ…?」
予想打にしない答えにあたしが茫然としている隙に、柳生は筆箱の中から真新しいケースを取り出し、手渡してきた。
「よかったらどうぞ。」
「えっ、そ、そんなの悪いよ!柳生も使ってるんでしょ?」
あたしが無駄に1人で焦っていると、柳生はクスリと笑い、「大丈夫です」と言った。
「私は使いませんから」
そう言って見せてくれたシャーペンには、確かに"0.5"の文字が。
「えっ…じゃあ何で?」
「さぁ、何故でしょう」
小さなお揃い
(君に近付きたくて)
(でもまだ、それは言ってあげない)
(期待しても、良いの?)
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