少女。

□3.ビル街
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「何を見たの。」
「何も見てないわ。」
「嘘。悲しそうな顔してる。」
「言ったら、また甘えてしまうわ。」
「何を見たの。」
「言えないわ。」
「こっちへおいで。」
「行けないわ。」
「じゃあ、僕が行くよ。」
「来ては駄目!」

虚勢。
少女は、立っている。
歩けない。
唯、立っている。

「私…きっとまた、間違えたんだわ。」

震える身体。
震える、心体。

「何が、いけなかったのかしら…?」
「…。」

コツ、コツ。

「私、ちゃんと笑ったのに…。」

コツコツコツ。

「私…私が、私があの人を、殺して…?」

ぎゅっ。

「殺したのかしら…?」
「…。」
「殺したのかしら?」
「…。」
「殺したのかしら!?」
「こっちを見ろよ!!」

少年はその手で、少女の頬を包む。
乱暴に目を合わせ、合わせて、そらさない。
綺麗な顔で、優しい顔で。
彼の様に微笑んでいる。

「忘れてしまいなよ。」
「忘れられないわ。」
「やめてしまいなよ。」
「いったい、何を?」
「背負う事を。」
「出来ないわ。」
「傷つく事を。」
「出来ないわ。」
「君は、君しかいないんだよ?」
「…私しか出来ない事を、探していたいのよ。」
「君は、君しか守れないんだよ?」
「どうでも、いいわ。」
「嘘をつくなよ。」
「嘘じゃないわ!」
「嘘は、かなしいよ。」
「どうでもいいったら!」
「ほら、かなしい。」

少女はそうして崩れ落ちる。
限界。
体の限界。
心の限界。
少女の限界。
少年は、それを解っている。
解っているから、寄り添ってきた。
そしてこれからも、寄り添って行く。
少年は隣りに 座って微笑んだ。

「…ごめんなさい、結局甘えてしまったわ。」
「気にしなくたって良いんだよ。」

少女も少年に、にこっと微笑んだ。

「僕が望んで、此処にいるんだから。」

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