創作小説〜バイナルテック・アナザーストーリー

□バイナルテック アナザーストーリー〜リンク
2ページ/13ページ

プロローグ


 被験者のボディに無数の電子コードが繋がれている。
 最終段階にE.D.C.関係者はおろか、関係トランスフォーマーやテレトラン1までもが緊張し、固唾を飲んで見守っていた。
 張り詰めた空気を一掃するかのように、被験者は笑みを浮かべ、親指を立てる。
 少女は不安でそばにいるウーマンサイバトロンの足元にしがみついた。少女の不安を払拭するためか自らと不安を共有するためか、彼女は少女を抱き上げた。
 部外者は安全エリアから見守る他ない。強化ガラスの下で動き回る研究者の中に、少女は両親を見つけた。今二人はブルーカラーのプロール…チェイス・モードと会話をしているらしい。離れてホイルジャックが機器の操作をしている。
 少女の眼下に白と赤のトランスフォーマーが横たわっているのが見えた。
 ウーマンサイバトロンの話に因れば、白いボディのトランスフォーマーの人格を赤いボディに搭載するのだと言う。
 が、五歳児の理解を超えた内容だった。一つ分かったことは、二体、好きなトランスフォーマーができるということだけだった。
 ガラスに張り付いて食いいるように見つめている少女に気づいたのか、被験者は軽く手を振る。バイザーの奥の目が笑っているのが分かる。
 ホイルジャックに注意を受けた彼は肩をすくめた直後、装置に吸い込まれて行った。
 テレトラン1が実験開始のオペレーションを流した…直後!
 警報が実験棟に鳴り響き、同時に激しい振動が建物を揺らした。
 眩い光が、一瞬少女の視界を覆った。
 誰かが叫んだ。
 実験棟はその瞬間、戦場と化した。
 迎撃に出るサイバトロン戦士たちは次々と倒れ、必死に少女を守ろうとしたウーマンサイバトロンも撃ち抜かれた。
 守る者がいなくなった少女は救いを被験者に求めた。が。
 ガラスを破り、巨大な手が少女に伸びた。

―そんな!?

 間一髪で逃げた少女は自分の目を疑った。
 少女を襲ったのは、さっき手を振ってくれた
「彼」だったのだ。
 バイザーの奥の目が赤く殺気に満ちている。
 叫んだかどうかも分からない。
 暴走したトランスフォーマーが轟音と共に視界から消えた。

 ―ぼくガ守ル!

 声にならない声が少女に届く。
 現れた赤いトランスフォーマーに少女は目を見張った。

『彼はZOOM-ZOOM。私の分身…人間流表現では子供かな』

 ―ぱぱハ言ッテタ。人間ヲ守レッテ!

 差し出した手に少女が触れた瞬間、ZOOM-ZOOMと命名されたレプリカ・オートマトンは飛躍し、戦場へと突進した。
 少女はその背中に別の人格を重ね合わせた。



『ジェネトロニック・トランスシステム実験はデストロン襲撃の為失敗。
 被験者マイスターの暴走もあり実験棟は大破、復旧は不可能。
 尚、被験者マイスターは機能停止』


『機密事項。
グラナダ基地にて、同時刻同地点に、解析不明の巨大なエネルギー体の反応あり。
 現在は活動停止。引き続き監視を続ける』



そして、20年の月日が流れた…。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ