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□今年、来年、願うならその先まで
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※textW「あなたにささげる愛のうた」の『GIFT』を先に読まれることをオススメします。




「・・・どうした?」


時刻は深夜2時前。
シーツにくるまってベッドで寝そべってたら、急に声をかけられて肩がびくっと震えた。
顔をあげると、シャワーを浴びて出てきた刹那がいて。
淋しいけど、ふたりで風呂なんか入ったら、重たい腰が悪化して立てなくなっちまう。


「んー、新しい年を一緒に迎えてくれる人がいるっていいなぁって」


こういう特別っぽい日を一緒に過ごすと勘違いする奴もいるから、遊び歩いてた頃はいっつもどっかの店でアルコールに溺れるばっかりだった。
・・・今は、俺が勘違い野郎じゃないことを祈ってる。

大晦日の夜はいつもみたいにベッドで刹那と絡み合ってて、気づいたら年が変わってた。
なんかどきどきしてたのに、ちょっと拍子抜け。
でも普段からセックスばっかしてる俺たちっぽくていいかも、とも思う。


「明けまして、おめでと」


改めて言うと、なんかちょっと恥ずかしい気がした。

ふっと顔をあげたら、刹那の顔が真ん前にあった。
だから俺は条件反射で目を閉じた。そういう風に、身体ができてる。


ちゅ、と一度軽く唇が触れてから、刹那の舌が口内へ入ってきた。
歯列をなぞられて、俺も舌を差し出す。誘うみたいに。
もっと奥へ、入ってきてほしくて。


「ぁ・・・んっ、は」


唇を離すと、溢れた唾液が顎をつたった。
刹那がそれを舐めとってくれる。
ふたりで息を荒くしながら、指を絡めた。
そしたら、ひんやりした感触があって。

視線をそっちにやると、俺の顔がだらしなく緩むのが自分でもわかった。
だって、嬉しいんだから。


俺の視線に気づいた刹那が、俺の左手を持ち上げる。
んで、薬指で誇らしげに輝いてるリングに恭しくキスなんかするから。

視界が滲む。


「泣くな」


目尻や瞼に唇を落とされた。
零れないように我慢してるのに、かぁっと眼球の奥が熱くなってく。
ぱちぱち瞬きして、なんとか落ち着こうとするけど。

額をくっつけて、鼻を摺り合わせて見つめ合う。
赤褐色の瞳のなかに俺が映ってた。


「去年はさ、刹那に会えて、これももらって、すげぇいい年だったんだ。」

しゃくりあげそうになるのを何とか堪えてたら、ぎゅうって刹那に抱きしめられた。
胸がつっかえて言葉がでなくなるくらい、しあわせが身体の中で広がっていく。


「今年はもっといい年になる。俺がいい年にする。だから、俺の隣りにいればいい」


心臓がばくばくする。
人間の心臓が一生のうちに脈打つ回数は決まってるって聞いたことがあるけど、それなら俺は早死にするんじゃねぇの。
でも、それでもいい。
刹那が一緒にいてくれんなら、そっちのほうがいい。


「刹那、」

今年もよろしくな、って言葉は刹那の唇に飲み込まれて、音にはならなかった。



A HAPPY NEW YEAR !!

20090101


今年もよろしくお願いします。
ということで新年早々、魔性の兄貴シリーズです。
単発で始まって、皆様に愛していただいて続きを書いているシリーズなので、ゴールが見えません。笑
こんな感じで、これからもいちゃつく二人をお届けできればと思います!

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