text
□1日じゃ足りない
1ページ/2ページ
「やべっ」
時刻は9時すぎ。
今日はなぜかセットしていたはずの目覚ましがならなくて、ロックオンは普段より起きるのが遅かった。
せっかくの休日。たまった洗濯物を片付けたいし、弟たちの部屋に掃除機もかけたい。
予定より寝坊して、なんだか少し損をした気分になる。
とりあえず、まだ寝ているだろう三人の弟たちを起こそうと部屋を出た。
ロックオンがバイトで帰るのが遅かったり、末っ子の刹那ももう中学にあがったので、最近は別々に寝るようになったのだ。
言い出しっぺのくせに、それを一番寂しがっているのはロックオンだったりする。
「おきろー!休みだからって・・・」
いつまでも寝てんなよ、と続けようとしたのに。
言葉は尻すぼみになって消えていった。
「どうしたんだ?」
どうした?は、ロックオンの台詞だ。
低血圧でいつも寝起きが悪く、毎朝起こしに行っているティエリアが、1人で起きてもう着替えも済ませていた。
休日なのに。
「いや、起きてるならいいんだ」
ティエリアだけでも、もう起きているなら先に朝食の用意をしてないと。
そう思ってダイニングに向かうと、いい匂いが漂ってきた。
「おはよう、ロックオン」
アレルヤがフライパン片手に振り向いた。
テーブルにはすでに四人分のフレンチトーストにグリーンサラダとヨーグルト。
あとは目玉焼きで完成らしい。
「簡単なものしか作れないけど」とアレルヤが微笑む。
ロックオンはぱちぱちと瞬きをした。
・・・なんか、拍子抜けだな。
毎朝、二度寝が当たり前のティエリアと、起こしてから15分はぼんやりしているアレルヤがこんなんじゃ。
喜ばしい光景ではあるが、なんだか寂しい気持ちがこみ上げてくる。
「なんだよ?今日にかぎって」
首をかしげるロックオンに、アレルヤはテーブルのうえに飾ってあるカーネーションを指さす。
昨夜まではなかったはずのそれを見て、ロックオンはなんとも言えず、くすぐったいような温かさがこみ上げてきた。
「・・・こんなでっかい子供をもった覚えはねぇけどな」
ロックオンは苦笑した。
「兄の日がないから仕方ない」
背後から声がした。
ティエリアがやってきて、テーブルにつく。
「いつもありがとう、ロックオン」
目玉焼きをのせた皿をテーブルに並べて、アレルヤが言う。
こうやって改めていわれると照れるもんだなぁ、とロックオンは頭をかいた。