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□願いごと、ひとつ
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食堂に入ったライルの目に、奇妙なものが飛び込んできた。
天井に届きそうな高さの植物が、壁際に飾られている。

おそらく、昨日に地上へ買い出しに降りていた刹那とフェルトが買ってきたものだろう。
ライルはその植物を見上げているラッセに尋ねた。


「なんなんだ?これ」

「七夕、だそうだ」


ラッセは色紙のようなものを手に、ライルに答えた。
よく見ると、その植物にも同じような紙が何枚か吊り下げられている。

聞いたことのない言葉に首を傾げていると、背後から「スターフェスティバルだ」と刹那の声がした。
それなら聞いたことがある。


「これ、ライルも書いて」

刹那と一緒に食堂に入ってきたフェルトに、ラッセと同じものを手渡される。
ただの紙だ。


「これに願いを書いて、笹に吊すんだ」

「・・・願い、ねぇ」


ここにきた当初なら、馬鹿にしていただろう。
こんな組織がのんきにイベント事を楽しむなんて。
それでも、こまめに祝われる誕生日や季節ごとのイベントにライルも慣れつつある。


意外なことに、率先してイベントを提案するのは刹那だった。
それにフェルトやミレイナが賛成するという流れだった。

何のために、誰のために、誰の代わりに、その役割を刹那が選んだのか。それは、尋ねたことはなかったけれど、きっとライルの予想通りのはずだ。


CBの過去の映像を見たとき、いつだってみんなの笑顔の中心にいた人は。


「なにを書くかなぁ〜」

垂れ下がっている紙(短冊というらしい)を見ると、「みんながずっと元気に過ごせますように」とある。
たぶんフェルトあたりだろう。
「美味しいお酒に出会えますように」なんてのは、考えるまでもない。


「・・・そういや、お前はなんて書いたんだ?」

そう聞くと、刹那は黙ったまま一枚の短冊を指差した。
そこに書いてあったのは、たった一文。


あいつがちゃんと笑っていますように。


誰を指すかなんて、やはり聞くまでもなくて。
切なくもあったし、胸が痛くもあった。
でも、一番に浮かんだ気持ちは羨ましさだった。

ただひたすらに、脇目もふらず。ひとりしか、見えない。
会えないことさえ、障害にならないほどの。
ライルは思わず笑みをこぼした。

幸せもんだな、兄さんは。


ライルも短冊に願いを書いていく。
俺は刹那みたいに、相手のことばかりは考えられないし。
だから、せめて。
この先なにがあっても。

大切な人たちの笑顔を、一生忘れませんように。



20090707

ギリギリ七夕に間に合いました・・・!
久々すぎて、ライルの口調がわからないです。別人だったらすいません。
ニールの口調はもちろん覚えてるんですが。

時期的には二期後のイメージなので、アレルヤとティエリア不在です。

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