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□お兄ちゃんがふたり
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「・・・何なのよ?」
食堂に入ったとたん、スメラギは年少組ふたりの強い視線を感じて後ずさった。
けれど、入ってきたのがスメラギだとわかると、ふたりは興味を削がれたように視線をそらす。
無言のふたりに「失礼しちゃうわね」とため息をついた。
「ロックオンを待ってるんだと」
腕を組んで壁に寄りかかっていたラッセが言った。
「私たちは用なしみたいですよー」
クリスがおどけてそう続ける。
姿が見えないリヒティはブリッジにいるらしい。
ラッセとクリスの言葉に、なるほどね、とスメラギも苦笑した。
またしゅっと音がしてドアが開くと、刹那とフェルトの視線は瞬時にそちらに動いて。
だが、入ってきたのは待ち人ではなくヴァーチェとキュリオスのメンテナンスから戻ってきたティエリアとアレルヤだった。
アレルヤがふたりの視線にスメラギ同様どぎまぎしていた一方で、ティエリアはふたりに向かって端正な顔に無表情を貼り付けて口を開く。
「ロックオン・ストラトスじゃなくて残念だったな」
まったくだ、という風に刹那とフェルトは頷いたが、ティエリアは不機嫌な顔ひとつ見せなかった。
意外に、あの3人は通じ合うところがあるのか、とクリスやスメラギは顔を見合わせる。
ミネラルウォーターでのどを潤したティエリアは、そのままさっさと出て行ってしまう。
アレルヤは「ロックオンならもうすぐだよ」とふたりに声をかけた。
「なんだぁ?みんな揃ってんのか」という快活な声とともにドアが開いて、待ち人が姿を現した。
「「ロックオン」」
そうふたりが声を揃えて、ぱたぱたと彼の傍に走り寄る様子はいやに微笑ましい。
どうした?と、優しい声色でふたりに尋ねる最年長マイスターの姿も含めて。
「この前、暇なときに料理おしえてくれるって言ってた」
フェルトがそう言うと、ロックオンは嬉しそうに頷いた。
「そうだったな。メシにはちょっと早すぎるし、なんかお菓子でもつくるか」
「・・・そういうのって、普通私たちに頼みません?お菓子づくりですよ」
クリスの言葉に「私は料理なんかさっぱりだから、ロックオンのほうが適任だわ」と苦笑いを返す。
「まぁ、ロックオンにかまって欲しいんだろ」
ラッセがクリスに励ますように言った。
「材料なんかあったかなぁ」とつぶやきながらキッチンに入っていこうとするロックオンと、それに続くフェルト。
そのふたりを止めたのは、さっきからだんまりを決め込んでいた刹那だった。
「ロックオンは俺と地上でトレーニングをする予定のはずだ」
明日からしばらく地上で羽を伸ばせそうだとスメラギに聞いて、今日のロックオンの単独ミッションが終わったら一足早く地上に降りようという話だった。
ちゃんと約束をしたわけではない。
けれど、ひとりでトレーニングをすると限度を知らない刹那なので、手が空いているときはロックオンが付き合うのが決まりごとになりつつある。