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□愛だけで生きていけますか?
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シャツを床に落として、ベッドのうえで仰向けになって寝転ぶ。
ジーンズの前を開けて、ひとつため息をついた。
・・・こっからは勝手にひとりでやればいいんだよな。

ひとりでするなんてかなり久しぶりなうえ、それを録画されるなんて、いくら俺でも初体験で。

ビリー・カタギリは「自分のやり方でいいよ」なんて気楽に言ってくれたけど。
盗撮もののAVらしいけど、どんくらい声をだせばいいんだろう。
ひとりで触りながらあんあん言ってるのって、けっこう落ち込みそうだ。


男の身体なんて単純で、適当に触ってれば興奮するもんではある。
撮られてると思うとさらに興奮する奴らも多いのかもしれない。

でも、8つも下の高校生に骨抜きになってる俺の身体は、なかなか熱がともってくれない。

なんか、もう。
身体が、刹那仕様にカスタマイズされてきてる。



なんでこんなことをするハメになったかというと。

つかの間の幸せなんだし、めいっぱい味わっとこうと現実逃避してたら、財布の中身がびっくりするほど淋しくなっていた。

以前は財布を持ち歩くことすらほとんどなかった生活だったし。
金の心配をするにしても、あと5年は先だろうなんて思ってた。


セックスは儲かるけど、恋愛は金がかかる。
そんなことを24にして学んだ今日この頃


いつもらったかも今となっては忘れたブランドもんのスーツと時計を売って。
当分はそれで持つとしても、リアルにまずい。

どんなに睨みつけてみたって、財布のなかの諭吉は増えねぇし。
その日寝る相手が飲み代やらメシ代を持ってくれるのが当たり前だったせいか、俺の銀行口座はすっかり錆びついて、蜘蛛の巣が張っててもおかしくない有様。
家出てからずっと、それで困ったことなんかなかった。


今週は刹那がテスト期間らしく、禁欲週間になることが決まってる。
本人は黙ってたけど、アレルヤにちゃんと聞いた。
こういうときくらい年上の威厳を見せとかないと。

刹那は成績優秀らしい。高校も結構な進学校だ。
それなのに俺と寝てばっかりなせいでバカになったら、笑い事じゃない。
そんなの、死にたくなる。
なんたって俺は、オーラルと言われて、英語じゃなくセックスが先に思いつくどうしようもなさで。

とにかく、バイトするなら今週中だった。
いつかもらった名刺を引っ張り出して、連絡をとった相手がビリーだ。



刹那の触り方をぼんやり思い出してなぞっていると、はぁ、と熱い息が口から漏れた。

頭に靄がかかったようになってきて。いけそう、と思った瞬間。
ドアが勢いよく開いて俺は動きを止めた。

・・・いやいやいや、相手がいるとか聞いてねぇし。
ひとりでするだけでいいって言うから、わざわざビリーに連絡をとったのだ。


「勝手に、何をしている」

その低い声に、背筋がぞくりとして。

あからさまに怒りを含んだ声なのに、身体中をいっきに快感が駆け巡って、俺はびくびくと震えて脱力した。
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