textU

□抱きあえれば、それだけで
1ページ/2ページ



・・・ひと月まえに初めてキスしたときよりだいぶ上手くなってるなぁ、なんてぼんやりと思っていたのがいけなかった。


いや、おかしいから。

ロックオンは混乱する脳内でそのフレーズを繰り返していた。

重ねた唇から溢れて顎をつたっていく唾液にさえ気づかないほど、そのときのロックオンは混乱していた。

いやいやいや、どういう展開だ?
どこをどう間違ってこんなことになってるんだ?


目の前でドアップになっているのは、八つ下の最年少マイスター。
無愛想で、前しか見てない利かん坊。
でも、ときどきかすかに口元だけで笑うのが、年相応でいやに可愛い。


その刹那と自分の唇が重なってるとこまではセーフだ。
舌が入ってきちゃってんのも、大丈夫。
落ち着け。
と、ロックオンはなんとか考える。

けれどふさがれた口では深呼吸もできなくて。

とにかく、キスは問題ない。

なんたってひと月ほど前から、ロックオンと刹那は年の差と同性というハードルを易々とこえて真剣なお付き合いをしているのだ。



すぐジャンクフードに走る刹那に食事の世話をしたり、伸びた髪を切ってやったりするうちに、毛を逆立てて威嚇していた猫に懐かれたかのように距離が縮まって。

一緒にいるときの雰囲気が優しくなってきたような気がした。

どんどん刹那がかわいく見えてきて、甘やかしたくなって。
「好きだ」と言われた日には、なんて都合のいい夢だろうなんて思った。

それでもやっぱり年下のうえに未成年に手を出すというのは、なかなか決断がいるもので。
しかも、男同士なら刹那の身体にかなり負担がかかると思うし。


そうやってロックオンが、いつ先に進むべきか考えていたら、突然部屋にやってきた刹那がなんのオブラートにも包まず「セックスがしたい」なんて言い出した。


ロックオンはうろたえつつも「なにするか、わかってるか?」と問いかけた。

そして、「ちゃんと、勉強してきた」という刹那の答えに少し頭を痛めつつ。

どうせミス・スメラギかクリスだろうなぁ、刹那との関係はなんとなく知られているとしても後でなんて言われるかなぁ、と思うと頭痛は増した。

でも、この淡泊そうな子どもがそれを望んでいると思ったら、なんだかきゅうっと心臓が締め付けられる感じがした。

嬉しさと、ちょっとの罪悪感のせいで。



お互いに上半身裸になって、ベッドのうえで向き合った。
そしていつものように唇を重ねた。


・・・そしたら、いつの間にか。
キスしているうちに、ロックオンのうえに刹那が体重をかけて覆い被さってきたのだ。

それもかろうじて、百歩譲って、セーフだとして。
俺の胸もとを探っているこの手はなんだ。

はじめは体重を支えるためかと思っていたけれど、今でははっきりとした意志を持って刹那の手は動いている。

なんで童貞の刹那に、俺がリードされてるんだ?
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ