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□この気持ちに、ラベルを貼らないで
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「最近は顔色がいいじゃないか」


いっそう美しく見える、なんて男に言うセリフじゃねえだろ。
そう思うけど、相手がグラハムだから言うだけ無駄だ。


「いい抱き枕があって、よく眠れてるからかもな」

俺がそう言うと、カウンター内のアレルヤがくすくすと笑う。


「それは妬けるな」

俺の最近お気に入りの「抱き枕」くんは、キッチンから出てこない。
グラハムが苦手みたいだ。


「ところで、今夜は暇かい?」

グラハムが俺の髪をゆっくりと梳きながら尋ねてくる。
毎日のように誰かと寝ていた少し前までなら、何の躊躇いもなく頷いただろうけど。
ちょっと考えてしまうのは、身体を酷使してようやく訪れる眠りより気持ちいいものを知ったからだ。


「んー、どうすっかなぁ・・・」


刹那は、ほんとに添い寝しかしてくれない。
昨日も刹那のベッドにお邪魔したおかげで、身体も軽いし、グラハムとすんのも久々だし。

なんて、空のグラスの中で氷を遊ばせながら思ってたら。



「今日は、そろそろあがる」


ガンっ、とでっかい音をたてて、刹那が俺の前にグラスを置く。
これは刹那の奢りってことでいいのかな。


「少年、君も姫に魅了されたというわけか」

「あんたと一緒にするな」


刹那が眉間の皺を深くして言った。
・・・妬いてんのかなぁ。

俺が緩んだ顔で刹那に視線をやると、睨まれた。
こんなだから、刹那をからかうのは楽しい。


「今日も泊めてくれんのか?」

「好きにすればいい」


考えてみれば、この間はじめて家にあげてもらってから、二日とあけず泊まってる。
刹那に合わせて毎朝ちゃんと起きてるし、朝ご飯まで食べさせてもらって、素晴らしく健全な日々。

俺の身体じゃ欲情できないってわけじゃないのは分かった。枯れてるわけでもない。
それなのに。
床上手なことしか取り柄がない俺を抱きたがらないくせにかまうなんて、刹那はほんとに物好きだと思う。


「着替えてくるから待っていろ」

そう言い残して、刹那はまたキッチンの奥に消えた。


「てことだから、また今度な」

腰に回っていたグラハムの腕をはずして、俺は笑いかけた。
珍しく不機嫌そうな表情だったから、「しょうがねぇなぁ」と顔を寄せる。
軽く唇を合わせてから舌を入れて上顎をなぞった。

「、んっ・・・は」


本格的にグラハムがのってくる前に顔を離す。
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