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□始まらないから終わらないもの
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「たぶん、朝まで起きない」
フェルトは抱えていたハロをサイドテーブルにそっと置いた。賢い独立AIは、自動でスリープモードに切り替わる。
 
ロックオンや誰にでも優しい。

とくに幼い自分と刹那を気にかけているのは言うまでもなくて。
フェルトや刹那が自身でも意識していない、物心ついたときから抱えていて身体の奥深くに住み着いている淋しさが、ロックオンの笑顔や手のひらに揺さぶられる。ざわめく。
それは不安を掻き立てたりもしたけれど、それを越えて、惜しみなく与えられる温かなものがある。それがどんどん降り積もって、知らなかった自分が顔を出す。
そのくすぐったさを表す言葉は見つけられないけれど、いつかロックオンに伝えられたらいいとフェルトはそう思う。
彼へ微笑みを返せたら、と。

おやすみ、と言って部屋を出ようとしたフェルトに、刹那は軽くベッドサイドを叩いてみせた。
壁際、ロックオンの顔が向いているほうだ。そして刹那自身は反対の背中側へ寝ころんだ。

「寝る」
それだけ言うと、刹那は目を閉じてしまった。
フェルトは少し悩んだけれど、ベッドに乗り上がってロックオンと向かい合うように寝ころんだ。
長い睫毛が、すうっと通った鼻が、すぐ近くにある。柔らかな吐息の音が聞こえる。
まじまじと見つめている自分が恥ずかしい。
 
ベッドのサイズが大きめといっても、3人で寝るには狭い。
刹那は落ちないようにべたりとロックオンにくっついているようだった。フェルトはしばらくもぞもぞして収まりのいい位置を探し、ようやく瞼をおろした。
 
おやすみなさい、そう心の中でつぶやく。

そして今日はこの場所を譲ってくれた少年に、ありがとう、と。


臆病、といわれればそれまでだけど。
刹那のように茨道を選ぶことは、フェルトにはできない。

始まったら、終わることが怖くなる。

だから。

この距離が永遠につづくように、願いをかけて。

Fin.


20080624
未成年組は兄貴にめーっちゃかわいがわれて、ぎゅうってされてるといいです。
んで言えないけど、せっちゃんとフェルトは、兄貴だいすきだいすき届け届けって思ってたらとってもいい。
兄貴になついて兄貴のもとに集って、いっぱい愛し愛されてると素敵!
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