氷帝夢

□幸せの延期
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「明日香さん、今日も送っていっちゃ駄目ですか?」

「うん」


あっさり笑顔で断るのはこれで何度目だろう。


私と長太郎は付き合い始めて結構日が経つ。
長太郎はかっこよくて私には勿体ないくらいの人。
だから私と付き合っているのに告白なんてしょっちゅう。
別に信じてないとかではないけど不安になる。
もしかして他に"好きな人"が出来たんじゃないかって。


「じゃ、長太郎またね」

ある訳ないのになんで考えてしまうんだろう。
そんな状態の私に優しくしてもらうなんて申し訳ない。


「明日香さん…俺の事好き?」


いつもならここで笑って別れるのに今日は悲しそうに私を引き止めた。



「長太郎どうしたの?」


「いつも明日香さんは送らせてくれないじゃないですか。…だから好きじゃなくなったかなって」


初めて私にちゃんと気持ちを伝えてくれた気がする。
先輩の私に遠慮ばかりで気持ちを抑えてくれてた気がしたから。


「…ごめん、不安な思いさせてたんだね。そん事言わないで、私は長太郎が大好きなんだから」


「明日香さん…」


不安だったのは私だけじゃなかった。
長太郎も私の勝手な行動のせいで不安にさせてたなんてお互い様って事かな。

「恥ずかしい事言わせないでよ!」


恥ずかしくって長太郎に背を向けたら後ろから抱きしめられた。

「…良いじゃないですか、明日香さんとっても可愛いですよ。俺も大好きだ…。」


なんか私溶けそう。
長太郎に抱きしめられて、耳元で囁かれるなんてヤバすぎ。

しかも首に顔を埋めてきた。

「ヤメっ!」


このままだとなんかダメな気がして力いっぱい長太郎を剥がした。


ちょっとしょんぼりしてたけど頭を冷ました方がためだと思う。

思春期って大変ね。



「でも、何で送っちゃ行けないんですか」

一人で私が考えていると長太郎が私の顔を覗き込みながら手を握ってきた。
そして質問もついてきた。

長太郎が私の事を好きって事も確認出来たし私も反省する事があって今となっては送ってくれてもいい。


だけど

「…長太郎が胸に手を当ててよーく考えてご覧。答えがわかったら送ってくれてもいいよ」


「えっ原因は俺ですか!?」



モテる長太郎に嫉妬して、もう少し幸せは先延ばし。



幸せの延期
(待って待って、やっと来た方が幸せが大きく感じるでしょ)
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