氷帝夢

□救世主
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彼は私が肯定したことに満足したのかとても得意げな顔に変わっていた。


「俺の眼力はなんでも見透かすんだよ」


「にしてもなんで私に話しかけたの?ほっとけばいいのに」

私が問えばなんでかわからないけど彼は私から顔を背けちらちらと私の顔を見ては口をぱくぱくさせてる。

かわいい金魚みたい。

やっと声が聞こえてきたと想えば


「お前が気になったんだよ」
「テスト答えてる奴は全部合ってるのに全部はやらねぇ」

「俺様と目が合ったと想えば逸らすどころか凝視して、かと言って俺の名前はうろ覚えときた」


「しかもなんだってんだよ、」


「教室出てく時俺と目が合った時の・・・あの顔はなんだよ」


「誰かに助けを求めてるような虚しい顔」


勝手につらつらと述べながら黙って私の近くに寄って来た。
それと同時に私より幾分高い彼の身長のせいで私は彼の顔を見るべく必然的に上目使いになる。
何故彼はこんなにも私が分かってしまうの?

話したことも無かったのに


「気になんだよ・・・」



彼の手が私の頬を包み込む。

私は彼の手から伝わる温もりが気持ちがいいと想った。
彼から香る香水の香は嫌じゃない。


「跡部って・・・面白いね」


私はそういって彼の手に私の手を添えて眼を閉じた。
私は確かに彼が言ったように誰かがこの退屈な世界を変えてくれると求めていたのかもしれない。
もしかしたらあの時彼を見て彼が私を退屈な世界から救ってくれるとわかったのかもしれない。
ねぇ、貴方は私をこの世界から救ってくれますか?


「私を・・・この退屈な世界から救って・・・」


小さく呟いた助けの言葉は確実に彼に伝わっていて、私の手をとり指に優しくキスを落とした。


「救ってやるぜ・・・退屈なんて感じさせねぇよ」


私を見つめる綺麗な眼に至極引き寄せられて、本当に彼なら私を退屈な世界から救ってくれるのかもしれない。


いや、もう私は彼に出会った瞬間(とき)から既に抜け出していたとおもう。


こういう気持ちが…恋…なんていうのかな。



退屈な世界に光をくれた貴方に私は恋をした。







救世主
(それは初めて恋した人)





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