氷帝夢

□グラスの音
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朗らかな笑みを向けてくれた。
私は軽く会釈をして挨拶をする。


「本当に美しい娘さんだ。なぁ景吾」

跡部さんは想像してたのと違い若い男性だった。


「えぇ」


「あ、ありがとうございます」


息子さんはかっこよかったと思う。
堂々としていて大人びているから父さんの言う通り確かに素敵な人だとも思った。

だけど、愛想笑いで怖かった。



しばらく親を含めて食事をした。

出て来るものは一級品ばかりで素晴らしかった。
だけど息苦しくて味がよくわからなかった。


「じゃあ私達は仕事の話しをするから二人は自由にしてなさい」

「明日香礼儀よくしてるんだよ」


そう言って私達二人を残して出ていった。

さっきの話しを聞く限り息子さんは景吾と言って、中学三年生でテニスが上手いらしく、しかも勉強も出来て生徒会長、一年生から部長もやってるらしい、カリスマって奴ね。

雰囲気が落ち着いていたから私より年上だと思っていたのに意外。
親が出ていってメイドさん達もいなくなって部屋に二人だけ、沈黙が少し息苦しい。


「…景吾さんって中学生でしたよね」

「あぁそうだが。…敬語は止してくれないか?もう親はいないんだ。しかもお前の方が年上だろ」

沈黙を破ったのは私。
どうしても嫌だった。

景吾くんはすぐに返答してくれたけどいきなりお前呼ばわり、彼の態度は親達がいた時と違って偉そうだ。

それがちょっと不思議でなぜか可笑しくて緊張してた気持ちが緩んだ。

「、景吾くん化けの皮剥がれたね」


「アーン?」

「さっきから愛想笑いばかりで痛々しいよ。まぁ、カッコイイとは思ったけどね?…親だけに向けるんじゃなくて私にまで向けて来たから少し怖かった。」

ニッコリ笑って話せば景吾くんは少し驚いたようだけど優しく笑ってくれた。


「フッ、わかってたのか。それは悪かったな」

笑みは大人びていたけどやっぱり中学生な気がした。


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