氷帝夢

□グラスの音
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「大人の世界って残酷で恐い…嫌いでも本当の気持ちを悟られないようにするの、酷いと思わない?」


「それがビジネスだ」


わかってる。
大人の世界じゃ子供の我が儘は致命傷になる。
いかに上手く表に感情を隠せるかが社会で生き残るためなんだ。


「…悲しいよね。私は嫌いな人と関わりなんてしたくない。景吾くんもそう思うでしょ」


「あぁ、俺は嫌いな奴とはプライベートで関わらない主義だ」


景吾くんもわかってるんだ。
大人の世界を近くでたくさん見てきたからこそ高貴でいようとする。



「子供まで大人の言いなり…情けないよ」


子供はどうあがいても刃向かえない。


「今日だって不本意で来たの、きたくなかった」





子供の力じゃ勝てないの。
未熟な力で刃向かっても大人の嘘を纏った力には勝てないから諦めるしかない。



「俺は嬉しかったがな」


私が一人虚しく思っていた中景吾くんは意外な言葉を零した。


「これは俺が頼んだんだ。お前に会いたいと」


私をしっかり見据えて淡々と述べた。
青い綺麗な瞳に私が映し出されているのかな。

っていうかあれって口説き文句?


「だったらさ…もっと嬉しそうにしたらどう?」


嬉しいと言ってるわりに嬉しそうには見えない。

景吾くんは目を反らしてしまうしお世話かな。
私が虚しく耽ってたから機嫌をとろうとしたんだ。

気を使わなくていいよと私が言う前に景吾くんの口が動いた。


「…ーーだ」



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