氷帝夢
□グラスの音
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小さくて聞き取れないしまだ目は反らしたまま。
「ごめん、聞き取れなかったもう一度お願い」
心なしか景吾くんの顔が赤い気がするけどきっと気のせいだろう。
今度はゆっくりとはっきりとした声で言ってくれた。
「会ったらマジで惚れたから緊張してんだよ」
言った途端テーブルに腕を乗せ頬杖をついて顔を反らした。
さっき顔が赤いと感じたのは気のせいじゃなかったみたいだ。
恥ずかしかったんだ。
でも冷静を装ってた。
もし電話だったら完璧ね。
声は落ち着き払っていて…でも表情に出てしまうのは隠せなかったんだ。
「景吾くん、可愛い」
中学生の男の子にこんなことを言えば機嫌を損ねるのは知ってる。
だけどつい口から零れてしまうほどにそう感じた。
案の定景吾くんは眉間にシワを寄せてふて腐れているしね。
まだまだ子供だっていうことかな。
「絶対振り向かせてやるからな」
ニコニコ景吾くんをみていたらそんなことを言われた。
「それはそれは、楽しみにしてる」
年下の男の子…だけど意志の強い目は少なからず私には魅力的に思えた。
今は子供扱いするけどすぐに子供扱い出来なくなるほど大人びてしまいそう。
でも景吾くんなら大人になっても今の大人みたいに嘘を纏わない人になってくれる、そんな気がした。
景吾くんが私を振り向かせられるかわからないけど楽しみ。
私はテーブルに置いてある水の入ったグラスを手に持って景吾くんのグラスに宛てた。
音が部屋中に響き渡った。
グラスの音
(いつの日か私達が大勢の人に囲まれてチャペルを鳴らすなんて思わなかった)
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