氷帝夢
□花火
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屋台が列ぶお祭り会場は既に拓さんの人が来ていて賑わっていた。
それもそのはずで日吉は部活が終わってからこっちに来たのだ。
だから既に時間は7時を回っていて1番の騒ぎ時だ。
「私、林檎飴食べたいな」
「お前本当甘いの好きだよな」
着いて早々甘い物の話をする私に日吉は笑っている。
何だか子供扱いされたようで反論したくなった。
「そういう日吉こそさっき私が濡れ煎餅あげたとき嬉しそうな顔してたじゃない」
「なっ、それはそれだ」
ああいえば日吉は照れた様に視線を反らした。
「日吉はやっぱり日吉だね」
「お前もだろ」
眉間にしわを寄せている日吉に私は嬉しくてたまらなかった。
その表情がやっぱり日吉らしいと思う。
意地っ張りなところが変わってなくて懐かしいとかんじた。
さっき感じた寂しさは日吉が変わったんじゃない、新しい表情を見せた日吉が私の知らない人みたいで悔しかったんだ。
「ねえ…日吉」
どうしよう、伝える気なんてなかったのにどうしてか
「ん?」
きゅっと日吉の腕に腕を絡めた。
「好きだったんだ」
そう呟いて日吉を見上げた。
私がこんな行動するなんて信じられない、自分でも驚いてるけれど日吉の方が驚いてるみたいだ。
「日吉のこと今も好き」
にっと笑う私に対して何とも言えない様に目を見開く日吉がいる。
そして辺りが一層騒がしくなる瞬間びっくりする程引き締まった腕に綴じ込められた。
こんなに日吉は大きくなったんだね。
胸が大きく高鳴ったのがわかった。
盛大な花火が辺りから夜空一面に光りを燈した。
大きな音と人々の声が重なる。
人々が真上の大きな色鮮やかな光りの花を見上げ、歓声を上げる中で私は日吉の背中に腕を回した。
耳元には日吉の顔がすぐあって息が掛かってくすぐったい。
重なる身体から伝わる日吉の熱が心地よい。
まるで夢の様に…ーー、
「…ーーー 。」
微かに動いた唇から、言葉が小さく打ち上げられた。
花火
(君が告げた言葉は何よりも愛おしく嬉しいわ)
2009.6.26