*旅の日課編 3*



「本当に悟空は優しいわね。そういうところ、好きよ」



 本当に嬉しそうに、愛しそうに彼女が言うから、悟空の顔の赤みは更に深まってしまった。

「うーっ! だからッ! そういうのが困るんだって!」

 何とか腕を解いてもらおうと必死になって叫ぶ悟空に、けれど彼女はニヤッと笑って宣った。



「困ってるのが見たいって言ったら?」



「性格悪…」

 それにはさすがの悟空も、つい本人を目の前にしても毒を吐きたくなってしまった。
 が、彼女はそれも気に留めていない。

「だって私は悟空と旅をし始めて日が浅いもの。悟空のいろんな顔が見たいし、いろんな反応を見たいわ。困ってる顔も、恥ずかしがってる顔も、全部よ」

 だから。



「だから、私から逃げないでさえいてくれたらいいわ」



 また、彼女は自信満々に宣った。の、だけど。
 それは、なんだか。

 逃げないでという懇願に聞こえた。



 から。

「ね?」

 そうして、自信があるんだかないんだか分からない顔で説得されてしまうと、悟空にはもう何も言えない。
 顔を真っ赤にしながら小さく頷く悟空に、彼女が深く安堵したように息を吐いたのも、要因だ。

「やっぱり悟空は優しいわね。大好きよ」

 だから、また更にこんな困るような事を言われても今度は何も言えなくて、悟空はただ恥ずかしさに顔を俯かせるしかなかった。



 そして、なんだかんだでずっと抱き合ったままの二人に、いつの間にか起きていた三蔵、悟浄、八戒の三人はどのタイミングで声をかけたらいいのか、迷って迷って結局放置を決め込んだ。
 八戒の用意する朝食の香りで、悟空の腹の虫が暴れ出すまで、あと数十分。

 そんなこんなで、三蔵一行の平和な朝は明けていく。



END.


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