小説♂×♂
□イケナイ専制君主
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――――格差社会。
テレビなんかでよく耳にするこの言葉。
その言葉の意味も、その言葉すらも知らなかった子供時代から、それはしっかり俺の日常に根付いていた。
強者と弱者。
使う者、使われる者。
上に立つ者、踏み付けられる者。
悲しい事に俺はその後者として16年間生きている。
***
両手に抱える程の惣菜パンを胸にひた走る。
三階に続く階段を一段飛ばしに駆け上がり、生徒会室と表札のかかった重厚な扉の前に立つ頃にはむせ返りそうな程に息が上がっていた。
ノックもせずにドアを開けると、どこかの社長室のような大袈裟な造りの室内で、これまたちょっとどうよな感じのする会長席に偉そうに踏ん反り返っていた男が、チラリと冷たい視線を俺に向ける。
「遅いんだよ。お前は亀か?」
息すらままならない程に肩を上下させる健気な俺に、細い銀縁フレームの眼鏡の下、呆れたように目を細めそんな第一声を投げ付けるクソ野郎。
こいつが俺を長年虐げている張本人、長谷川 昴という最低最悪な俺の君主サマだ。
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