小説♂×♂
□イケナイ専制君主
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「う…る…せぇ…っつの」
文句すら上手く声にならない程ひとを全力疾走させといて、礼の一言も言えないなんてどんな教育受けてんだ。
心中毒づきながら、よたよたする足を気合いで前に踏み出させ、俺は大量の惣菜パンを机の上に乱暴に落とす。
「まったく口も態度も悪い下僕だな。躾直してやれる程俺は暇じゃないんだぞ」
ゆったりと足を組み直しながら大袈裟な仕種で溜息をつく昴に、俺の頭の中で何本か血管が切れていく音がする。
―――待て、きれるな、落ち着け自分。
震える拳を握りしめ、呪文のように何度も心の中で繰り返す。
こいつの言うことに、いちいち腹を立てたらきりがない。
深呼吸しろ、俺。
「拓海、コーヒー」
自己暗示に更ける俺にはお構いなく、王座に身を置く王様のように昴は次の命令を下してくる。
コーヒーがなんでしょう。
お飲みになりたいということでしょうかご主人様。
………だから、落ち着けってば俺。
「そうだ拓海。ミルク1だぞ。また砂糖なんか入れやがったら頭からぶっ掛けるからな」
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