小説♂×♂

□イケナイ専制君主
2ページ/15ページ



「う…る…せぇ…っつの」


文句すら上手く声にならない程ひとを全力疾走させといて、礼の一言も言えないなんてどんな教育受けてんだ。


心中毒づきながら、よたよたする足を気合いで前に踏み出させ、俺は大量の惣菜パンを机の上に乱暴に落とす。


「まったく口も態度も悪い下僕だな。躾直してやれる程俺は暇じゃないんだぞ」


ゆったりと足を組み直しながら大袈裟な仕種で溜息をつく昴に、俺の頭の中で何本か血管が切れていく音がする。


―――待て、きれるな、落ち着け自分。


震える拳を握りしめ、呪文のように何度も心の中で繰り返す。


こいつの言うことに、いちいち腹を立てたらきりがない。


深呼吸しろ、俺。


「拓海、コーヒー」


自己暗示に更ける俺にはお構いなく、王座に身を置く王様のように昴は次の命令を下してくる。


コーヒーがなんでしょう。


お飲みになりたいということでしょうかご主人様。


………だから、落ち着けってば俺。


「そうだ拓海。ミルク1だぞ。また砂糖なんか入れやがったら頭からぶっ掛けるからな」


.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ