諒と美幸の甘いカクテル

□待たされて…
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人を待っている時ほど、時間は進まないものかもしれない。

そして、それは、苛立ちに繋がる。


俺はベッドの上で読む気もない経済誌を捲りながら、少し苛立ち始めていた。

顔を上げて寝室の隅に視線を移せば、待ち人…その本人の妻が視線を感じたのか鏡の中から恥ずかしそうに微笑んだ。


そんな妻に俺は、苛立ちを隠して微笑み返すと、視線をまた雑誌に戻して、ベッドの上でページを捲りながら溜め息を吐く。


『はぁ〜ぁ。まだ掛かりそうだな』


美幸は、湯上がりの身支度に時間が掛かる。


だから風呂に一緒に入った時は、一人寂しくベッドの上で美幸が身支度を終えるのを待つはめになる。

もともとマイペースな面を持ってはいたし、長年そばにいたから承知もしてはいるつもりだったが、夫婦として暮らし始めて、初めて気付く事、実感するものもある。

慣れてはきたが、日によっては、バスルームからベッドまでそのまま抱いて運びたい衝動に駆られる事すらある。


美幸はそんな俺の思いを知ってか知らずか…時々鏡の中からさっきのように微笑みかけては、俺の欲望を煽るくせに、焦らすのだ。

まあ…多分、本人にそんなつもりは無いだろうが…



今夜の俺は、そろそろ限界が近い。


再び、美幸を見れば、案の定、鏡の中で微笑んだ。

それも今度は、その頬をほんのりと桜色に染めて……
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