魔王

□新生
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それは、あまりにも突然の事だった

父さんが殺された

目の前で


「おーい、早く下りてこいよ!」
少年が木の上にいるもう一人の少年に声をかける
「うるせぇな…ほら、おいで。」
木の上の少年は下りれなくなっていた子猫に手を差し伸べる
この少年の名は、桜井圭咲(さくらいけいさく)
狩野宮高校の一年生であり、肩まで伸びている髪と、159cmと小柄なため、みかけではよく、女性と間違えられる
一方、下で圭咲を待っている少年は、織田真太(おだしんた)
圭咲と同じく、狩野宮高校の一年生であり、ボクシング部に入っている
圭咲とは、高校で知り合った
『ミャー』
「下ろしてやるから、お出で。」
手に寄ってきた子猫を抱き上げ木の枝に足を掛ける
そんなに高くもなければ低くもなかった
慎重に下りていくが、運悪く枝が折れ、一気に地面に落ちる
落ちている途中に何とか地面に背を向け、子猫を助けた
「辞めとけば良かったことを…」
真太がボソッと呟く
「悪かったかな、真。」
圭咲は軽く真太を睨み、子猫を地面に放す
「もぉ、気を付けろよ」
圭咲は頭を撫でた
『ミャー』
子猫は返事をするかのように鳴き、何処かへ行っていった

「んじゃ、俺は用事あるから。」
「おぉ、明日な。」
しばらく歩いて着いた交差点で真太は手を振り、何処かへ行った
圭咲は用事など特に無い為、家へ帰る
彼にとって家は『家』であって『家』では無かった
三年前、母親が交通事故で死んだ
そして、1ヶ月もしないうちに父親再は婚した
再婚相手を気にいるわけがない
父親が嫌いだったのだから
父親である太一は、家に居るのに関わらず、何一つ相手等してはくれなかった
話し掛けても、『五月蝿い。』の一言で終わる
「…ただいま。」
(何時ものように静かな時が始まるのか…)
リビングのドアを開け、入る
足に、何か違和感を感じる
水の様な液体
(水…いや、何だこの臭い)
部屋中が生々しい臭いで包まれている
足元を見ると、鮮やかな真紅の血が流れていた
(なんで血が…)
「ぐっ!!」
太一の嗚咽がキッチン付近から聞こえた
いくら嫌いでも、父親が心配になりキッチンへ向かう
キッチンには、斬り傷だらけの太一と、剣を手にした、銀髪の少年が立っていた
剣先からは血がたれ流れている
少年は圭咲に笑みを浮かべ、剣を太一に突き刺した
「父さん!!」
圭咲は慌て駆け寄った
だが、意識はすでに朦朧としていて口を開いたり閉じたりして何かを言おうとしている
「なんにも言うな!!」
圭咲は叫ぶ
それでも太一は彼に必死に伝えようとする
「に…にげ…ろ…お前が、新たな…」
最後まで告げずに、太一は力尽きた

-To be continue-
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