Clap Novel

□3年目の誕生日
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*がくぽ誕生日の限定(?)小説



「・・・んっ・・・んんー・・・」

「・・・まだ寝てろって。水飲むか?」

「・・・んー・・・」

7月31日、ボカロ家 がくぽの部屋。

涼し過ぎる程に冷えたその部屋に、彼ともう1人・・・どこか辛そうな女性の声が響いていた。

「全く・・・無理するなっていつも言ってるだろ?軽いとはいえ熱中症・・・元も子もないじゃないか」

「・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」

がくぽの膝の上、横たわる桜色にそう声をかけると、返ってきたのは消え入りそうな位小さな声。

「まだ少し熱いな・・・ルカ、汗拭くからこっち向いて」

彼は息をはき、表情の見えない桜色・・・ルカにそう言う。

彼女は、つい数時間前まで仕事だったのだ。

それを無理矢理終わらせて、猛暑の中急いで家に帰ったのは、今日という日ががくぽの誕生日だったから。

しかし、その疲れと無理が祟り、パーティーの最中に・・・ルカは倒れてしまったのである。

マスターによる診断結果は、軽い熱中症。

パーティーは勿論中止、ルカはがくぽによって介抱される事になったのだ。

「んー・・・・」

先程から、彼女は自分の方へと顔を向けてくれない。

「・・・ルカ」

がくぽは言い、ルカの頬へと手を伸ばす。

少し強引な気がしたが、そうでもしないと彼女は動いてくれないだろう。

「・・・ごめんなさい」

ようやく見せてくれたその顔は、今にも泣きそうなものだった。

「もう・・・無理はするなよ?皆も心配してたんだからな」

「だって・・・・」

「・・・その気持ちだけで十分だよ。ありがとな、ルカ」

そんなルカに笑いかけ、がくぽは言うと彼女をそっと抱き上げる。

紅くなっている頬を優しく撫で、キスをしようとするがそれは叶わなかった。

突然、ルカが起き上がり自分の腕から抜け出したのである。

「・・・・ルカ」

「・・・もう大丈夫・・・ちょっと、待ってて」

まだふらついているというのに、何を言っているのだろうか。

がくぽは言うが、彼女は構わずに部屋から出ていってしまう。

数分後、何やら包みのような物を持って部屋に戻ってきたルカ。

「・・・ルカ・・・?」

「・・・時間、なくて その・・・好みじゃないかも、しれない・・・けど」

そんな言葉と共に、綺麗に包装された包みを彼女は差し出す。

それを受けとり、中身を確認したがくぽの瞳が大きく見開かれた。

「・・・甚平・・・!?」

「・・・がくぽ着流しばっかりだし・・・たまには、良いかなって」

プレゼントの中身は落ち着いた色合いをした・・・甚平だったのである。

好みがどうとか言っていた割りには、自分に似合う色をしっかりと選んでいるところがルカらしい。

「・・・っとに・・・お前・・・明日、早速着てみるよ。それにしても・・・あはははっ・・・」

突然、声をあげて笑いだすがくぽ。

彼女の真っすぐな愛情は、何年経っても変わってはいない。

こんなにも温かく、溢れんばかりの気持ちを貰える自分は、何て幸せなのだろう。

嬉しくて嬉しくて、こうして笑っていなければ、泣いてしまいそうだったのだ。

「・・・がくぽ・・・?」

そんながくぽの心の内を知ってか知らずか・・・暫くして、ルカの顔にイタズラめいた笑みが浮かぶ。

「・・・がくぽ、がくぽ」

「・・・ん、水でも飲むのってうわっ!!!!」

瞬間、彼女は勢いよくがくぽを押し倒したのである。

見開かれる彼の碧い瞳に、零れてしまったペットボトルの水。

熱が抜けきっていない故、火照るルカの姿はいつも以上に艶かしかった。

「・・・今日だけ、特別なんだからね・・・」

言うなり、がくぽの唇に彼女の唇が重ねられる。

絡められた舌が、吐息が熱い。

「・・・っ・・・んっ・・・ん・・・」

回復しきっていないルカの体が心配だったが、そんな考えは頭の隅に追いやられてしまう。

彼女から流れ込んでくる何かが・・・自分の中に広がっていくのをがくぽは感じていたのだ。

それは、蕩けてしまいそうな位に甘美なもので、もっと感じていたい、その全てが欲しいと訴えかけてくる。

「・・・・は・・・・あぁ・・・・」

切なげな吐息を漏らして、そのまま・・・がくぽは目を閉じ、その熱情の中へと身を任せた。

















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