リクエスト小説

□2人を繋ぐ 大切な
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「・・・カイト」

突然かけられた声にメイコは振り向く。

そこにいたのは、困ったように笑うカイトだった。

「全く・・・マスターが買ってくれないから、自分で買ってるの、めーちゃん知ってるでしょ?」

「食べた分はちゃんと買うわよ」

隣に座った彼に、メイコは言う。

「・・・ねぇカイト」

「ん、なーに めーちゃん」

「何で・・・抹茶アイスばっかりなの?」

「・・・・え?」

彼女の問いに、カイトはキョトンとした。

「だから・・・アンタ冷凍庫の中に抹茶アイスしかないでしょ?」

「ああ なるほど」

カイトは言う。

メイコは頷いた。

「たまには違う味食べたらどうなのよ?」

続けられた彼女の言葉に、彼は首を振る。

「僕は抹茶でいいんだ。抹茶、嫌いじゃないし」

「そう・・・?でも、抹茶アイスばっかりだと体が緑色になるわよ」

「ハハ、大丈夫だよ。・・・それにさ」

カイトは言うとメイコの持っていたアイスを口に含んだ。

そしてそのまま、彼は彼女の腕を引く。

「・・・っ・・・」

青色に染まった視界に、唇に触れる熱いねつ。

隙間を割って入ってきたカイトの舌が口内に抹茶の味を広げていく。

苦いはずの抹茶は、とても甘く感じられた。

暫くして、唇を離したカイトは楽しそうに笑い、言う。

「・・・こうすると、甘く感じられるし、ね?」

「・・・あ・・・え・・・?」

「フフ。あ、ごめんね食べちゃって。僕もアイス取ってこようかな」

そう言い、カイトは居間から出て行く。

未だ顔を真っ赤にして俯いているメイコを見つめ、彼は微笑んだ。

思い出される、メイコと初めてちゃんと話をした日の夜の出来事。

『・・・ホラ・・・アイス好きなんでしょう?これ食べて・・・明日から頑張りましょうよ。一緒に』

酷い事を言ってメイコを傷つけたあの日。

それでも、彼女は笑って彼を受け入れてくれたのだ。

『・・・抹茶アイスしかないの?・・・随分な家だね』

『仕方ないでしょ!!古きよき日本の味よ!!』

そう言われて食べた、初めてのアイス。

『・・・苦っが・・・』

『この苦さがいいのよ』

カイトの言葉にメイコはそう言って笑った。

その時からだった。

彼の中で、彼女が特別な存在になったのは。

「君は覚えてないだろうけど・・・僕にとっては、大切な思い出なんだよ」

カイトは言い、小さく微笑んだ。

冷凍庫から取り出した抹茶アイス。

苦い筈のこのアイスが、2人を甘い甘い関係へと結びつけたのである。


照れてはいたものの、メイコはきっと自分の事を待っているに違いない。

「・・・今行くよ。めーちゃん」

彼は微笑むと、居間へ向かって歩き出した。

その手に、思い出のアイスを持って。





・・・fin...







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